日立製作所とマイクロソフト、生成AIで戦略的提携--3年間で数十億ドル規模を見込む
この提携により、両社は次の4分野において取り組みを進める。 1.日立の全社トランスフォーメーションの推進 日立の「Generative AIセンター」がMicrosoftと連携しながら、Copilot for Microsoft 365、GitHub Copilotの活用による業務効率化やアプリケーション開発の生産性向上、「Azure OpenAI Service」を活用したカスタマーサービスの高度化を推進していく。 具体的には、日立全社のAIトランスフォーメーションの一環として、アプリケーション開発においてAzure OpenAI ServiceやGitHub Copilotと日立のシステム開発の知見などを組み込み、ミッションクリティカルシステムにも対応する高い開発品質の維持と生産性向上を実現する。日立のナレッジである詳細設計情報を入力した社内検証では、アプリケーションのソースコードを 70~90%の割合で適切に生成でき、品質の高いアウトプットを得られることを確認したとしている。 また、鉄道事業のグループ会社である日立レールでは、機器監視の強化や予測精度の向上による予知保全を可能にするため、生成AIを活用する。これにより、安全性を強化しながら、故障の低減、サービス品質の向上、運用コストの削減を実現する。この一例として、鉄道インフラをデジタルで監視するためのプラットフォームをAzure上で構築し、データの可視化と分析をAIで最適化することで、インサイトが得られることを確認した。この実績を基に、英国の大手鉄道システム運営会社であるNetwork Rail向けに適用した結果、架線の予知保全の意思決定を強化することができた。 2.革新的なデジタルソリューションの開発 日立はLumadaソリューションに生成AIのケイパビリティーを取り込むことで強化を図っている。既に2万社規模のユーザーを有する統合システム運用管理「JP1」のSaaS版である「JP1 Cloud Services」において、Microsoftの生成AIを活用したサービスの提供を始めており、金融・公共・製造など幅広い企業のIT部門のオペレーターによる障害対応の初動の迅速化や運用効率化を見込んでいる。先行実施した社内実証では、生成AIによりアラート対処方法を回答し、その根拠となるマニュアルなどの引用元も表示したことで、運用オペレーターの初動の判断時間を約3分の2に短縮できる効果を確認した。 今後さらに適用を拡大すべく、日立とMicrosoftは、新たにエネルギー業界においてもアセットパフォーマンス管理やエネルギー取引およびリスク管理などのデジタルソリューションを強化することで、エネルギー転換を支援し、ダウンタイムの削減と収益性の拡大を図る。これらのアプリケーションを拡張するためには、コンピューティングパワーとクラウドインフラの向上が不可欠であり、日立エナジーのエンタープライズソフトウェアソリューション技術とMicrosoftとのパートナーシップは、発電から送電・配電に至るエネルギーネットワークを最適化し、信頼性の高い持続可能なエネルギーを企業に提供する上で重要な役割を果たすという。 3.サステナブルな成長を目指した共同プロジェクトの開始 GlobalLogic、Hitachi Digital Services、日立ソリューションズをはじめとする日立グループ各社は、デジタルエンジニアリング、IT、マネージドサービス、クラウド向けアプリケーションサービスなど、幅広いサービスを提供している。今回のパートナーシップによる新たな開発では、Microsoftとの持続的なイノベーションを目指し、幅広いサービスの強化に注力していく。 また、AIに起因する二酸化炭素(CO2)排出量が地球環境に与える影響が増大する中、環境負荷低減に向け、日立とMicrosoftは欧州でのデータセンタープロジェクトをはじめとし、ゼロカーボン化に向けて取り組んでいく。 4.デジタル人財育成の強化 日立は、企業のAIトランスフォーメーションを支援する人材「GenAI Professional」を育成するプログラムに、GitHub CopilotやAzure OpenAI Serviceを活用した高度なソフトウェアの開発スキルを身につける研修なども組み込み、5万人以上のGenAI Professionalを育成する。