これから起こる…50代、団塊ジュニア「定年後」の雇用獲得競争の「勝ちパターン」もっとも重要な「本業」と「副業」すみわけ方法
解雇規制緩和法案の浮上、定年延長、役職定年の廃止など今年も労働環境を取り巻く様々なニュースがありました。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ” AI技術の進化でこれまであった仕事がなくなる、いわゆる「技術的失業」のリスクが取り上げられる一方で、平均寿命が延びるに伴い、労働寿命も延ばさないといけない現代社会。長く働いて老後費用を得るためには、新たなスキルを身につけ新しい仕事に就く-「リスキリング」が必要になります。 後藤宗明『中高年リスキリング』(朝日新聞出版)より一部抜粋・編集してお伝えします。
副業を活かす二刀流キャリア
ここからは、「学際的スキル」というテーマをより具体的にイメージしやすくするために、「二刀流」というキーワードを使ってご説明します。 米国大リーグでの大谷翔平選手の大活躍によって、脚光を浴びるようになった「二刀流」ですが、そもそもは、江戸時代の剣豪・宮本武蔵が両手に異なる種類の刀を持って戦うスタイルを指し、文字通りの「二刀流」として広まった言葉だと思います。 そこから転じて、「2つの要素を兼ね備えている、2つの異なる分野で同時に能力を発揮している」といった意味で使われるようになっています。 この二刀流を、私は「本業と副業」という意味で使っていますが、副業は「学際的スキルを磨く機会」として捉えると、とても魅力的な選択肢となります。私は、講演などで「二刀流キャリアを目指せ」と言って、皆さんに副業を持つことをおすすめしています。 (1)副業で、将来の自分の雇用の安全性を高める これまでの日本では長らく、本業を極めることがよいこととされ、副業は本業の邪魔になるといったマイナスの視点で見られることのほうが多かったように思います。 副業を禁止する企業が多く、二刀流キャリアの実現は難しい環境にあったと言えます。ですが、ここ数年、副業が認められている会社の割合は年々上昇していて、転職サイトのdodaが2023年8月に行った副業の実態調査では27.5%となっています。 ただその一方で、実際に副業を行っている人の割合は8.4%となっており、未だマイノリティであることがわかります。 副業を行う理由は、収入アップ、自己実現、リスキリング等、さまざまあると思いますが、私は「学際的スキルの獲得」という観点で、副業によって全く分野の異なるスキルを掛け合わせていくことが、将来の自分の雇用の安全性を高めていくと考えています。 そして、副業を通じて、個人のやりたいことを拡張していくことで、個性豊かな一人ひとりの固有のスキル││私は「identification(身分証明/ID)」を表すスキルという意味で、「IDスキル」と呼んでいます│が培われていくと期待しています。 このIDスキルこそが、AIに対抗しうる人間が持つ究極のスキルであるというのが、私の考えです。 (2)両極端を併せ持つ「意外性」がカギ 二刀流キャリアを築くにあたってのヒントは、実は意外なところに転がっています。テレビの世界です。 テレビは出演人数枠が決まっていて、さらにその番組の中での立ち位置や役割が決まっていて、同じタイプの人が複数出る必要がないことが多いようです。 そのため、その希少な出演枠を獲得するために、出演者が自分からアピールして仕事を取りにいく姿勢がとても積極的に出ています。特に、自分の本業での活躍の機会が減っていく中で、新たな自分の差別化戦略を行っているようにも見えます。 国民的アイドルだったSMAPがなぜバラエティ番組で活躍するようになったのかご存じですか? 1990年代に入り、1980年代に全盛だった歌番組が少なくなり、露出機会を別に探さなくてはいけなくなったからと言われています。 以前のアイドルは容姿端麗で歌って踊ることを極めていればよかったわけですが、時代の変化とともに、歌って踊れることに加え、笑いが取れることが求められるようになっていきました。 いわばアイドルがお笑い芸人の領域に進出するという「意外性」によって、新たな出演枠(仕事)を獲得してきたという経緯があるということです。 そのような「意外性」を利用したアイコンとしてまず思い浮かぶのが、松平健さんの「マツケンサンバII」です。一流時代劇俳優として活躍されていた中、50歳のときに「マツケンサンバII」がリリースされ、現在まで何度もブームを巻き起こしています。 時代劇のイメージと異なり、笑顔で歌って踊る松平健さんはグッズにもなり、女子高生にも愛されるキャラとして認知されています。 こうした相反する意外性をウリにしている芸能人はほかにもいます。例えば、俳優の哀川翔さんは任侠映画での活躍から「Vシネマの帝王」と呼ばれるに至っていますが、最近では俳優業に加えて、昆虫飼育、特にカブトムシ飼育に詳しいことでも有名です。 また、強面のイメージが強い俳優の的場浩司さんは、スイーツマニアとしての活動がメディアに取り上げられています。強面な的場さんがかわいいスイーツを紹介している「意外性」がやはりウケているのだと思います。 こうして「意外性」を活用して、そして、その意外性を持っている人が少ないという「希少性」も活かして、二刀流キャリアを築くということが芸能人の世界では一般的になってきているように思います。 これを私たちに置き換えて考えてみると、定年後に自分の就きたい仕事をするために、希少な「雇用枠」を争っていくことが予想されます。 そのため、自らの差別化に成功し、多様な仕事の依頼が来ている芸能人の方々の姿は、「10年後に必ず起こる…ますますヤバくなる、50代「ホワイトカラー」定年後に待ち受ける過酷な現実」で記した、これからの「定年4.0」の時代を生き抜く必要がある中高年の方々の働き方に大きな示唆を与えてくれます。