これから起こる…50代、団塊ジュニア「定年後」の雇用獲得競争の「勝ちパターン」もっとも重要な「本業」と「副業」すみわけ方法
「芸は身を助ける」の好循環
皆さんも自分の中で眠っている「意外性」や「希少性」を活かして、二刀流キャリアを築いていくことで、自分の未来の雇用を確固たるものにしていただけたらと思います。 学際的スキルの事例を研究している際に、とても興味深いニュースをブルームバーグの記事で見つけました。米国の投資銀行であるゴールドマン・サックスのパートナーが音楽バーで自らの引退について歌って踊っている、というお話です。 ここで注目すべき点は、ホワイトカラーの金融エリートが、エンタメという「意外性」を持った場で活躍している、という事実です。記事を読んでみると、幼少期にアマチュアミュージカルの舞台で歌っていた経験があり、それを活かして自分の引退をエンターテインメントにして披露したということです。 これは今後のキャリアを考えていく上で、とても価値のある出来事だと思います。俯瞰してみると、以下のように再現可能性のある形で誰でも活かせるのではないかと思うのです。 a 副業的なもので築いた専門性で仕事を受注する b 意外性による話題創出で、認知を向上させる c 垣根が溶解し、新しい分野を創出する これからは人間とAIやロボットなどのテクノロジーの活用による労働分担が明確に進んでいきます。その中で、「人間なのにすごい」というエンタメ市場は、これから大きな価値や意味合いを持つのではと考えています。 この傾向が進んでいくと、エンタメを含む趣味の世界とビジネスの世界が徐々に融合して、新しい分野、新しい「IDスキル」が次々と生まれていくのではないかと注目しています。 (3)副業が別の「本業」を生み出す これからは、誰でも自分の好きなことに本気で取り組み、それが副業となり、本業を行いながら複数のスキルを身につけていくことが求められる時代になっていくと思われます。 海外でビジネスを行っている際に、最近「SME(Subject Matter Expert)」という言葉を頻繁に聞くようになりました。よい和訳がないのですが、「特定の一つの分野の専門家」を指す言葉です。例えば、私自身は、リスキリングという分野におけるSMEという位置付けになります。 ここでお伝えしたいことは、「定年4.0」の時代を迎えるにあたり、会社員の方も何か一つ、ご自身の本業以外に、趣味も含めた専門家として自分の得意分野を持ち、できれば時間をかけて複数の分野のスキルを身につける努力をしておくことが、不確実な時代に自分自身のキャリアや雇用を支える「芸は身を助ける」好循環を生み出すだろう、ということです。 …つづく、<これから10年後に起こる…50代、団塊ジュニア「定年後」の新たな「熾烈競争」の現実…仕事に就くための生存競争にさらされる>では、人口ボリュームの多い団塊ジュニアが定年後に備えるべき能力をお伝えしています。
後藤 宗明(一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事)