言葉にすることの大切さ、しないことの優しさ【好きあま】監督が語る
5月24日(金)よりNetflixにて世界独占配信&日本劇場公開中のオリジナルアニメーション映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』は、『ペンギン・ハイウェイ』、『泣きたい私は猫をかぶる』などの作品で温かく爽やかな世界を丁寧な映像で描き出したスタジオコロリドの最新作。 【関連画像】小野賢章さん、富田美憂さんの写真や名シーンを見る(18枚) 「みんなに嫌われたくない」という想いから、“誰かのために”を一生懸命やってみるが上手くいかず、親友と呼べる友達が出来ない高校生・柊と、人間の世界に母親を探しに来たという“鬼”の少女・ツムギ。共に旅をすることになった二人は、旅先で多くの人と出会いながらさまざまなことを学び、お互いの気持ちを理解し合って行く。 監督の柴山智隆はスタジオジブリを経てコロリド作品に参加し、『泣きたい私は猫をかぶる』で長編監督デビューをはたした期待の新鋭だ。 “本当の気持ち”を隠すことで“鬼”になってしまうという独特のファンタジー設定を背景に、若い二人の成長を描くみずみずしい青春ストーリー。柴山監督はそこに、どんな思いを込めているのか? 柴山監督自身に語ってもらった。 ――本作はオリジナルアニメーションですが、監督ご自身としてはどんな作品を作りたいという発想からのスタートでしたか? 柴山 『泣きたい私は猫をかぶる』が本当にたくさんの方、特に10代の若い方たちに観ていただけたので、同じように10代をメインに幅広い層に観てもらえる作品を作ってほしいという話を、最初にいただきました。そして企画初期から、10代の子たちは今、何に悩んでいるのだろうということも考えていました。今はネットが普通に見られる時代で、家庭や学校の具体的な問題は比較的無難にやり過ごしているんじゃないかという気がするんです。それよりも、周囲からの反応を先読みしてしまって、自分の気持ちを隠してしまう。そして、そういう“誰にもぶつからない世渡り”が当たり前になってしまって、自分でも気付いてもいない。そんな子たちが増えてしまっているんじゃないのか……といったことを話合ったりしたんです。 ――「こんなことを言ったら、こう思われてしまうんじゃないか」と先に考えて、何もできなくなってしまう。大人でもありますよね。 柴山 柊、ツムギと同世代の方だけではなく、大人たちにもあると思うんですよ。SNSでこんなことを書いたら叩かれてしまうとか、置かれている様々な環境から気持ちを隠すことって。一方で、今作でモチーフにした「鬼」の語源を掘り下げてみると、もともと「隠=オヌ」という目に見えないものを指す言葉だということがわかったんです。目に見えないものを「オヌ=鬼」と呼んで怖れていた時代があった。そこに、自分の気持ちを隠しがちな現代人のありようを重ねることができるのではないかと考えました。 ――「鬼」というキーワードはどんなきっかけで導入されたのでしょう? 柴山 『泣き猫』に猫の面が登場しますが、そこからのつながりで「鬼の面をかぶった、鬼の世界からきた女の子」というアイデアが先にあったんです。そこからイメージを掘り下げていった時に、今お話しした語源の話が出てきて、テーマともつながっていけるんじゃないかと思いました。 ――個々の発想が運命的につながって。 柴山 そうですね。それに、自分自身の10代の頃はどうたったかと振り返ったりもしましたが、実は柊と似ていて、あまり上手くいっていなかったりして(笑)。人の顔色を見て言うことを変えてしまったりすることもあったように思います。そんな子たちに向けてのメッセージも、全編を通して入れ込もうと思っていました。「もっと自分の気持ちを、正直に伝えて大丈夫だよ」と。