河川改修はもはや治水だけじゃない…引堤で広がる河川敷、完了地区ではイベントやスポーツ大会開催も にぎわい創出へ高まる期待 薩摩川内市の川内川流域
一昔前までたびたび氾濫を繰り返していた1級河川・川内川で、国による抜本的な改修が進んでいる。このうち鹿児島県の薩摩川内市街部では、引堤と呼ばれる治水工事で川幅を次々と拡大。広大な河川敷が生み出される区域もあり、まちづくりにどう生かすか地元住民は知恵を絞る。 【写真】薩摩川内市街の引堤事業を地図で確認する
5月下旬、同市天辰町の川内川左岸ではショベルカーが古い堤防を削り、トラックは土砂を運んでいた。その50メートルほど後方には新しい堤防ができている。 この天辰第2地区(1.3キロ)では、既存堤防の外側に新堤防を造り、川幅を広げて流量を増やす国の引堤事業が行われている。長さ約137キロの川内川で、同市のみで実施。隣接する天辰第1(1キロ)や対岸の中郷(1.9キロ)、瀬口(1キロ)の各地区などで既に完了し、2024年度は上流の東郷地区でも着手することが決まった。 国土交通省川内川河川事務所によると、川内川沿いの市街部では、1970年前後に水害で甚大な被害が相次いだのを機に河川改修に着手。第1次整備で川を掘り下げ、93年からの2次で引堤に取り組む。 40年ほど前までは毎秒約4000立方メートルだった最大流量を、1.5倍に増やすのが目標。流域治水課の永谷恵一課長(46)は「これまでの改修で効果は確実に出ている」と強調する。
□ ■ □ 治水整備を終えた地区では、新たな河川敷を利活用する試みが広がっている。背景にあるのは、国が推進する「かわまちづくり」の施策だ。地元と連携して河川とまちの空間を融合させ、にぎわい創出を目指す。 代表的な例が、右岸の大小路地区。2011~21年度、1.5キロの堤防を最大60メートル外側に造り、河川敷5万8000平方メートルを5億円かけて緑化や舗装した。併せて市が川沿いの道路やトイレも整えた。 河川敷を管理するのは、民間を中心に地元9団体でつくる協議会。国から借りる市と協定を結び、23年4月から利用を受け付ける。初年度は子どものサッカーや屋台が集まるイベント、展示会などで55件の申請があり、幅広い世代の人が集う光景が見られた。 協議会の本田親文会長(75)は「昔は大相撲やサーカスもあった。再び川から地域全体を盛り上げたい」と話す。課題もある。現在は利用者から料金を取らず、任意の協力金を依頼。整備作業は協議会のメンバーがボランティアで担う。持続的に管理運営をするために、安定して収益を得る仕組みを模索している。