呉市が廃止方針を示している川尻東プール

　プールの数が全国的に減少傾向にある。スポーツ庁の調査によると、公営プールは25年で4割も減った。専門家は、プール利用の主な目的がレジャーから習い事や健康増進に移る中、ニーズの薄れた屋外型やレジャー型のプールが老朽化を機に相次いで廃止されているとみる。 【グラフ】全国の公営プール数の推移　レジャー型・屋外型は減少、一方で屋内型は…

■レジャー型は62・8％減

　同庁によると、最新の統計のある2021年度の公営プールの総数は、水泳用の屋外型▽水泳用の屋内型▽レジャー型―の3タイプで計3816施設。1996年度と比べ、2486施設（39・4%）も減った。 　タイプ別ではレジャー型の62・8%減、水泳用の屋外型の55・2%減が際立つ。笹川スポーツ財団（東京）は、60年代以降に整備されたプールが老朽化し、平成の大合併後に公共施設の統廃合が進む中、少子化に伴う利用減も相まって廃止が進んだとみる。 　広島県内でも、屋外型の廃止が相次いでいる。呉市川尻町の市営「川尻東プール」は来年度で廃止の方針だ。高校生以下100円と格安で子どもたちに親しまれたが、完成から半世紀たち老朽化。ろ過設備や配管の更新、修繕に数千万円かかるのがネックになった。孫を連れて行くという無職男性（67）は「小さな子どもでも遊べるプールなので、なくなったら困る」と残念がる。 　市は、近くに屋内型の市営「川尻温水プール」があり、水泳教室や水中ウオーキングでにぎわっていることも考慮した。市スポーツ振興課の堀直矢課長は「酷暑などに左右されず、通年利用できる屋内型の方がニーズが高い」と説明する。 　福山市は20年度に2施設を廃止したほか、29年度までにさらに2施設をやめる。東広島市は4施設、三次市は5施設を17年度以降に閉じた。三次市は合併前の旧市町村ごとのバランスも考慮したとする。民間施設では、屋外レジャー型のちゅーピープール（廿日市市）が9月1日限りで閉じ、広島東洋カープの新練習施設に生まれ変わる。

■屋内型は増加傾向　習い事で根強い需要

　一方で、水泳プールの中でも屋内型は増加傾向にある。公営では96年度の1625施設から21年度の1784施設へ、9・8%増えた。笹川スポーツ財団による4～11歳の習い事調査で「水泳」が10年以降、1位をキープするなど根強い需要があるためとみられる。 　同財団の熊谷哲上席特別研究員は「屋外型プールは通年使えないため費用対効果が悪く、建て替えの優先順位が低くなる」と指摘。「水泳に力点を置くなら、屋内温水型にして通年化したり、学校プールや健康増進施設と一体化して利用を増やすなどの工夫も考えられる」と提起する。