冤罪の被害額は70億円、248日間の独房暮らし 「それでも検察は謝罪も検証もしないのか!」東証1部上場企業創業者の怒り
この間、「自分は悪いことをした認識がない」山岸さんはほぼ毎日地検の取り調べに任意で応じていたが、2019年12月、ほどなく自身も逮捕されてしまった。それ以降、保釈を勝ち取るまでの248日間、大阪拘置所の独房で孤独に苦しみ続けることになった。 ▽彼女は天才、敵ながらあっぱれ 山岸さんは当時を振り返って言う。 「逮捕された時、『裏切られた!』と思いましたよ。ただ、検事も演技がうまいんですよ。『私はあなたの味方であって、逮捕状なんて出るはずがなかったのに』という口ぶりでね。だから拘置所に行った時も『こいつにはめられたのか? 違うのか?』と感情の葛藤ですわ」 それでも山岸さんは当時、弁護士よりも担当検事の山口智子氏を信頼できると思っていた。弁護士の接見は1日わずか1時間に過ぎないが、検事とは毎日たっぷり8時間の長い取り調べを共にしていた。 じっとしていることが大嫌いで、孤独が苦手だった山岸さんにとって、話し相手があることは何よりありがたかった。山口検事は、弁護士のように事実確認の厳しい突っ込みもなく、のらりくらりと雑談にも興じる。
「3畳の独房に鍵を掛けられて気がおかしくなりますよ。立ってはいけない、寝転んではいけない、何してもいけない。朝起きたら検察官が取り調べに来てくれるのが待ち遠しくて仕方がなかった。午後3時とかに取り調べが早く終わっちゃうと、『え、もう帰っちゃうの?』って思ったほどで。一番ショックだったのが『今日で起訴します、明日からは来ません』と言われた時ですね」 山岸さんはそのように倒錯した心理状態となり、逮捕後に弁護士から完全黙秘を求められても、抵抗を感じて取り調べに応じ続けた。大学は法学部法律学科出身だが、学生時分の不勉強がたたり、刑事司法はまるで無知。「正義の味方」は話せばいつか分かってくれると思っていた。 「逮捕後もまだ山口検事を信頼していて…。彼女は本当に天才です。何かしゃべらせるんですよ、関係ないことでも。人間、しゃべらされたら事件のこともしゃべってまうでしょう。どう喝する検事だったら僕も黙秘してますよ。彼女は敵ながらあっぱれでしたわ」