D&Iで成功する中小企業も。乙武洋匡と語る「新たなビジネスの源泉」
多様性はなぜ創造性を生み出すのか?
シュンペーターは、異なるものとものの組み合わせから新たな価値やビジネスモデルが生まれるのだと指摘しました。この「新結合」の理論は、多様性こそが異なる視点の交わりを生み、イノベーションが創出されることを示しています。 多様性を生み出す「寛容さ」を指摘したリチャード・フロリダ 都市研究者リチャード・フロリダは、みずから事業を生み出したり、新たな価値を生み出す人材(クリエイティブクラス)の研究の中で、「寛容性こそが創造的な人材を引き寄せ、都市や地域にイノベーションをもたらす」という理論を提唱しました。住む場所を自由に選ぶことのできる時代です。異なる視点でもの捉えたり、新たなチャレンジをしようという人材(=つまり、周囲とは異なる人々)が存在しやすく、許容されることが重要だと溶説きます。つまり、異なる背景を持つ人々が自由に活動できる寛容な環境が、新しいアイデアや価値を生み出す原動力になるのです。 今秋、岐阜県の人口問題研究会が発表した調査結果が波紋を呼びました。県内在住の10代・20代女性へのアンケートの結果42%が、岐阜県内に住みたくないとの結果だったのです。そして、注目すべきはその理由です。中でも、伝統的、固定的な職業観や結婚観といったいわば保守的な価値観が多様なライフスタイルを受容されない、と感じているとの声が多かったのです。まさに、寛容性の欠如が、多様性を損なおうとしている、残念な事例でしょう。 いずれにせよ、このリチャード・フロリダの視点は、企業にも適用可能といえるのではないでしょうか。寛容な企業文化は、異なる意見や価値観を尊重し、多様な視点が結びつくことでイノベーションを促進します。特に、寛容性が低い環境では、多様性は妨げられ、クリエイティブな人材が抑制され、革新的なアイデアは生まれないでしょう。フロリダの理論は、ダイバーシティと寛容性が密接に関連していることを示し、企業が寛容性を高めることで多様な人材がより活躍できる場を作る必要性を強調しています。そして多様性を担保する寛容さは、組織文化の問題だけでなく制度や運用に落とし込まれる必要があるでしょう。 ◾️日本企業におけるダイバーシティの課題 日本企業においても、ダイバーシティの重要性は徐々に認識されつつありますが、実際に企業文化や経営方針に反映されている例はまだ限られています。乙武さんは「日本では、長い間同質性が重要視されてきました。しかし、これからの社会では、多様性を受け入れ、様々な視点を組み合わせることが企業の成功に不可欠です」と述べています。 日本の戦後の高度成長期には、労働市場が主に健康な成人男性に集中していましたが、今後は人口減少や高齢化が進む中で、多様な人々が働ける環境を整えることが経済の持続可能な成長に繋がると考えられています。