能登地震の液状化被害 震度5弱の地域でも拡大 砂丘多い日本海側、宅地被害は1万5千件
■5月下旬にようやく支援策
広範囲に被害をもたらした液状化を巡っては、支援策が十分でないことが課題だ。公費解体や被災者生活再建支援金などは建物被害を前提とした支援であるため、地盤改良などが必要な場合、その上乗せとなる負担に対応できないためだ。
これに対し、石川県は5月下旬、液状化被害の支援策として、宅地修復の補助事業を打ち出した。1200万円を上限に費用(50万円までは控除)の3分の2を補助する仕組みで、補助額は最大で766万円となる。
富山県や新潟県も同様の補助制度を準備。国も財源を補塡(ほてん)するため、石川県の復興基金に特別交付税約520億円を配分するなどした。馳浩知事は「液状化地域の住民の怒りとあきらめに接してきたが、まずできることから進めていく必要がある」と述べた。
■南海トラフは最大13万棟超の被害想定
近い将来に発生が懸念される南海トラフ地震では、最大13万棟以上の液状化被害が予想されている。国は液状化対策の支援策を用意しているが、実際に対策に着手した自治体はまだ少ない。
平成24年に政府の中央防災会議がまとめた南海トラフの被害想定では、液状化による全壊被害は関東から九州にかけて11万5千~13万4千棟に及ぶとされる。国は液状化対策の支援策を充実させるが、その一つが自治体を対象とした宅地液状化防止事業だ。
道路などの公共施設と隣接宅地を一体整備する工事に国が補助を出す仕組みとなる。能登半島地震で液状化した地域に対しても、国の補助率が通常の4分の1から2分の1に引き上げられた。
だが、これまでに適用されたケースは少ない。東日本大震災で市域の8割以上が液状化した千葉県浦安市では被害建物が約9千棟に上ったが、実際に対策できたのは1地区33棟にとどまる。
壁となったのが住民合意だ。浦安市では、対象地区の住民全員の同意を目指し、住民説明会や自治会単位の勉強会を実施。平成26年11月までに16地区計約4千棟が工事参画を検討したが、工法によっては負担金が1世帯につき数百万円に膨らみ、大半は同意に至らなかった。