内部告発で発覚したJ2長崎の観客数水増し事件はなぜ起きたのか?
Jリーグの村井満チェアマンは25日、リーグ戦における有料入場者数を水増し発表していたJ2のV・ファーレン長崎に対して、始末書によるけん責と制裁金300万円からなる処分を科したと発表した。 チェアマンの諮問機関である裁定委員会の答申を受けた村井チェアマンが制裁処分を決定し、25日に長崎側へ通知。同日午後に都内で開催されたJリーグ理事会でも報告された。 長崎の調査によれば、2015シーズンの開幕戦から今年4月2日に行われた第6節まで、ホームのトランスコスモススタジアム長崎で開催されたリーグ戦46試合のうち45試合において最少で81人、最大では1400人を上乗せして発表。実際の入場者数との差分は2万4233人に達し、大半が試合運営関連スタッフやチケットをもたない無料入場者がカウントされていたという。 産声をあげる前年の1992年秋に、前哨戦として開催されたヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)からJリーグは有料入場者数の「実数発表」を実施。一の位までを正確にカウントして、後半途中にスタジアム内でアナウンスしてきた。 アマチュアだった前身の日本リーグ時代は、ホームチームの運営担当者がスタンドを見渡しながら、「今日はこれくらいかな」と入場者数を決めることが少なくなかった。こうした習慣を一変させたのは、初代チェアマンに就任した川淵三郎氏のひと言だった。 「スタジアムへ足を運んでくださるお客様一人ひとりを大切にしなければ、Jリーグに未来はない」 規約にも「実数発表」を明文化し、違反した場合の罰則も厳格に設けられた。プロ化という新たな歴史の扉を開くにあたり、ファンやサポーターを最も大切にした結果としてリーグ及びクラブ運営の公正性や透明性が保たれ、スポンサー獲得にあたって企業側の信頼を得てきた歴史がある。 2010年10月にはJ1大宮アルディージャが過去3年間にわたって、11万人を超える入場者数を水増ししていたことが発覚。Jリーグの大東和美チェアマンはけん責と制裁金2000万円を科し、大宮の渡辺誠吾社長が辞任。粉飾に関わっていたクラブ幹部2人も解任された。 大宮の一件は外部からの指摘と新聞報道が先行した結果、他のクラブを含めたリーグ全体にも疑いの目が向けられかねない状況を招いた。翻って今回は水増しされた人数が約5分の1であり、最終的には長崎による内部調査に基づく自己申告だったこともあり、制裁金300万円が裁定委員会から諮られた。 いずれにしても、Jリーグが最もタブー視する不正には変わりがない。約7年の歳月をへて、有料入場者数の水増し行為はなぜ再発したのか。背景にはJFLからJ2に昇格した2013シーズン以来、観客動員で苦戦を強いられてきた長崎の歴史があると言っていい。