【2024年フォーミュラEをイチから学ぶ/後編】最高峰電動レースに挑む11チームと東京E-Prix注目ドライバー
3月29~30日に東京都江東区有明の東京ビッグサイト周辺で開催されるABB FIAフォーミュラE世界選手権第5戦『東京E-Prix』。日本初の本格公道レースであり、完全電気自動車フォーミュラマシンを使用するフォーミュラEにとって、初めて日本で開催されるレースということで非常に大きな注目を集めている。 【写真】2023/2024年ABB FIAフォーミュラE世界選手権に参戦している22名のドライバー ここでは、待ちに待った日本での初レースを控え『2024年フォーミュラEをイチから学ぶ』としてフォーミュラEのレギュレーションや使用マシン、参戦メーカー、ドライバーなどを整理して3回の“特別版”としてお届け。東京E-Prixで初めてフォーミュラEを観戦するファンの助けになれば幸いだ。3本目となる今回は、2023/2024年“シーズン10”を争うチームとドライバーを紹介する。 ■体制を変えながら戦い続けてきた11チームの歴史 シリーズ開始から10シーズン目を迎えたフォーミュラEは、現在は11チームがタイトルをかけて争っている。どのチームも“新興”とは呼べないほどの参戦歴を積み上げてきている。 それはなぜかと言うと、今から10年前となる2014/2015年の北京E-Prixで開幕したフォーミュラEのシーズン1には10チームが参戦していたが、そのうちの8チームはそれぞれ体制などの変更がありつつも、現在までフォーミュラEを戦い続けているのだ。 ■2023/2024年シーズン10フォーミュラE参戦チームとその前身 参戦チーム/使用パワートレイン/参戦開始シーズン/前身/ドライバーズタイトル回数(前身含む)/チームタイトル回数(前身含む) ニッサン・フォーミュラEチーム/ニッサン/シーズン1/ルノーe.ダムス/1/3 ABTクプラフォーミュラEチーム/マヒンドラ/シーズン1/アウディスポーツ/1/1 ERTフォーミュラEチーム/ERT/シーズン1/NIO/1/0 アンドレッティ・フォーミュラE/ポルシェ/シーズン1/当初よりアンドレッティ/1/0 エンビジョン・レーシング/ジャガー/シーズン1/ヴァージン・レーシング/0/1 マヒンドラ・レーシング/マヒンドラ/シーズン1/当初よりマヒンドラ/0/0 マセラティMSGレーシング/ステランティス/シーズン1/ベンチュリ・レーシング/0/0 DSペンスキー/ステランティス/シーズン1/ドラゴン・レーシング/0/0 ジャガーTCSレーシング/ジャガー/シーズン3/当初よりジャガー/0/0 ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム/ニッサン/シーズン5/メルセデス/2/2 タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム/ポルシェ/シーズン6/当初よりポルシェ/0/0 ■前身はタイトル獲得の古豪 これまでフォーミュラEでもっとも多くのチームタイトルを獲得してきたのは、シリーズ開始当初に3連覇を成し遂げたルノーe.ダムス。 ドライバーズタイトルも一度獲得しているルノーは、2世代目マシンのGEN2が導入されたころに、パワートレイン・マニュファクチャラーとして参入を開始した日産自動車とタッグを組んだ。そして、GEN3マシンが導入されたシーズン9からはチームの国籍が日本へ変更され、現在のニッサン・フォーミュラEチームへと繋がっている。現在のチームランキングは6位だ。 次に、二度のチームタイトルを獲得しているのは、DSテチーターとメルセデスEQフォーミュラEチーム。DSテチーターはシーズン8を最後に参戦を終了しており、メルセデスはマクラーレンがその後を体制を継いだ。そのマクラーレンは今季シーズン10ではニッサンパワートレインを搭載しており、ランキング4位につけている。 チームタイトルを一度獲得しているのは、エンビジョンとABT(アプト)の2チームだ。ABTは1年の休止期間があるが、どちらもシーズン1から参戦を続けている。そのABTはアウディスポーツとともに戦っていたGEN1最終年のシーズン4にタイトルを獲得している一方、エンビジョンのタイトル獲得は昨季シーズン9という違いがある。現在のランキングはABTが11位、エンビジョンが7位だ。 今季2023/2024年シーズン10は東京E-Prix前にジャガーがランキングトップにつけ、ポルシェとDSペンスキーが続いている。このランキングトップ3チームは、これまで前身チーム時代を含めてもタイトル獲得経験のない3チームかつ、それぞれが異なるパワートレインを使用しているため、パワートレイン・マニュファクチャラー同士の争いにも直結している。 ■22人中7人がチャンピオン。元王者らに挑む“日本レース育ち”にも注目 11チームから2台ずつ、計22台のGEN3マシンが戦っているシーズン10のフォーミュラE。東京E-Prixでもこの11チーム22人がレースを繰り広げる。 ■2023/2024年シーズン10 フォーミュラE参戦ドライバーとチーム No/Driver/Team 4/ロビン・フラインス/エンビジョン・レーシング 16/セバスチャン・ブエミ/エンビジョン・レーシング 9/ミッチ・エバンス/ジャガーTCSレーシング 37/ニック・キャシディ/ジャガーTCSレーシング 1/ジェイク・デニス/アンドレッティ・フォーミュラE 17/ノルマン・ナト/アンドレッティ・フォーミュラE 94/パスカル・ウェーレイン/タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 13/アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ/タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム 25/ジャン-エリック・ベルニュ/DSペンスキー 2/ストフェル・バンドーン/DSペンスキー 18/ユアン・ダルバラ/マセラティMSGレーシング 7/マキシミリアン・ギュンター/マセラティMSGレーシング 22/オリバー・ローランド/ニッサン・フォーミュラEチーム 23/サッシャ・フェネストラズ/ニッサン・フォーミュラEチーム 5/ジェイク・ヒューズ/ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 8/サム・バード/ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム 33/ダン・ティクトゥム/ERTフォーミュラEチーム 3/セルジオ・セッテ・カマラ/ERTフォーミュラEチーム 48/エドアルド・モルタラ/マヒンドラ・レーシング 21/ニック・デ・フリース/マヒンドラ・レーシング 11/ルーカス・ディ・グラッシ/ABTクプラフォーミュラEチーム 51/ニコ・ミューラー/ABTクプラフォーミュラEチーム これまでフォーミュラEでは計8人がドライバーズタイトルを勝ち獲ってきた。シリーズ初年度王者のネルソン・ピケJr.を除くセバスチャン・ブエミ、ルーカス・ディ・グラッシ、ジャン-エリック・ベルニュ、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ、ニック・デ・フリース、ストフェル・バンドーン、ジェイク・デニスの7人はシーズン10現在も参戦を続け優勝を争っている。また、ブエミ、ベルニュ、デ・フリース、バンドーン、パスカル・ウェーレインの5人はF1への参戦経験がある。 そんな猛者たちが集うフォーミュラEシーズン10のポイントランキングで首位に立っているのは、今季よりジャガーのワークスチームに移籍したニック・キャシディだ。日本の全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)とスーパーGTでチャンピオンを獲得しているキャシディは日本でのファンが多い選手のひとりだろう。昨季シーズン9では、最終戦までチャンピオン争いを繰り広げており、今季は悲願の初タイトル獲得に期待がかかる。 キャシディを追うのは、元F1ドライバーのウェーレインとキャシディのチームメイトであるミッチ・エバンスだ。このふたりもフォーミュラEのタイトル獲得経験はなく、悲願の初戴冠を目指して打倒キャシディを狙う。 そして、初のホームレースを迎える日本のニッサン・フォーミュラEチームから参戦するのは、こちらも日本のSFとスーパーGTで経験を積んだサッシャ・フェネストラズと、ここまで2戦連続の3位表彰台を獲得しているオリバー・ローランド。昨季の参戦初年度からポールポジション獲得の速さを持つフェネストラズと、手堅いペースが持ち味のローランド、初開催で誰も走行経験のない未知数な東京E-Prixを戦うふたりの走りにも注目したいところだ。 7人の王者や元F1ドライバー、日本チームのニッサンや日本で活躍したキャシディとフェネストラズらと、注目どころが盛り沢山のフォーミュラE第5戦東京E-Prix。いよいよ今週末に初開催を迎えるこのレースで、最初のウイナーとして名を刻むのはどのドライバーになるだろうか。 [オートスポーツweb 2024年03月28日]