富士通はやっと「普通の会社」になる。時田社長が語る“1億総中流社会”に求められるもの
「FAXでのやりとり」で露見した、富士通の現実
── 異なる産業領域にテクノロジーを導入していく取り組みは、以前には行われていなかったのでしょうか。 時田:少し言いすぎかもしれませんが、富士通はクロスインダストリーをやってきていなかったんです。 当社は、長年システムインテグレーションサービスで成長してきました。製造業や流通業、金融業といった個別の業種やお客様のオーダー通りに作り上げるバーティカルに特化したビジネスモデルで成長してきました。 それ自体はまったく否定しません。ただ、Fujitsu Uvanceを発表する際に、ショックだったことがあるんです。 新型コロナウイルスの流行下で、病院と保健所、自治体の間でFAXでやり取りがされていた。これはものすごいショックでした。 ──「システム連携できていれば」と、当時から指摘されていました。 時田:すべて富士通のお客様でした。富士通は病院のヘルスケア事業・電子カルテで大きなシェアを持っています。保健所のシステムや社会保障のシステム、自治体のシステムだって作っていた。 ──でも、間をつなぐ(業種をまたぐ)提案ができていなかったと。 時田:要請があれば取り組んでいたとは思います。ただ、業種をまたぐような要請はそもそもその業種のお客様からは出てきにくい。 問題解決には業種間のコラボレーションが重要だということは、世界中でコンセンサスが広がっていますが、そのファクトをまざまざと認識しました。 ──それが「クロスインダストリー」を強調する背景だったんですね。 時田:ほかにも、世界経済フォーラムのダボス会議に出席するようになり、ある種の気づきもありました。 (ダボス会議では)名前を言えばわかるような企業のリーダーと会話するのですが、特にIT系のグローバルリーダーと話をする時に、テクノロジーの議論にはならないんです。 「5Gネットワーク」がテーマだとしても、5Gどころか3Gも通っていない国に我々はどう貢献すべきか、ということを議論するわけです。自分の視野の狭さや視座の低さを感じたのも事実です。