<箱根駅伝予選会>名門・中大復活の裏にあった苦悩と努力のドラマ
2年生主将に注目が集まるなか、チームは確実に変わっていった。舟津ひとりが奮起するのではなく、各学年が盛り立てて、予選会では強固なチーム力を発揮した。舟津はこの1年をこう振り返る。 「昨年の予選会で落選して1~2か月は本当にきつかったですし、今季の前半もトラックで結果を残せなかった。でも夏くらいから、チームがまとまり始めたんです。選手間のコミュニケーションが増えて、相互理解も深まりました。きついこともあったんですけど、昨年と違って、みんなが戦う雰囲気を作ってくれました。勝ったときに喜べるチームじゃないと、楽しくないですし、まとまりがないと、そういうチームはできない。 予選会を通過して、素直に喜べるチームになったんじゃないでしょうか」 肉体、コンディション調整に重要な食事の内容も改善された。アメリカの管理栄養士と相談して、タンパク質の量を毎食60gから80~100gにアップ。昨季から継続している筋トレの成果も出始めたという。 「全体的に筋力がついて、今季はケガが少なかったですし、レース後半の出力もだいぶ出せるようになってきたかなと思います。でも、いまの出力では箱根の上位では戦えない。あと2か月でレベルアップできるように取り組んでいきたいですね。ここがゴールではありません。今季は箱根のシード権を目標にやってきたので」と藤原監督。昨年は負け続けて、自分たちはダメなんじゃないか、という気持ちもあったというが、今年は 藤原監督自身が冷静になり、選手たちの意識改革を促した。 「昨年は怒ることばかりでしたけど、今年はほとんど怒っていません。怒ってどうこうできるような世代ではないんだなということを私も学んだので、選手たちには、できるだけ自分で意識を変えられるようにという話をしています。どの大学も同じようなトレーニングをしているので、最後は気持ちの部分。駅伝は気持ち8割のスポーツだと思います」 就任当時、藤原監督は将来的なビジョンについて、「チームとしては2~3年でシード権、5~6年で3位以内、10年で優勝を目指したい」と話していた。1年目の昨季は苦しんだものの、2年目の今季は目標を狙える位置までしっかりと軌道修正してきた。名門復活へ、中大が再び動き出した──。 (文責・酒井政人/スポーツライター)