10年間で「100万円超の差」に!?老親との同居で出費に大きな差がつく「たった1つの選択」
年末年始は、久しぶりに親と顔を合わせ、今後の暮らしについて話をするいい機会だ。親が高齢の場合、同居を検討することがあるかもしれない。よくあるのが、父親の死後、子どもが母親との同居を開始するというケースだ。実はその際、住民票を親と同一にするかどうかが重要な選択であることをご存じだろうか。筆者の試算によれば、この選択は10年間で「100万円超の差」につながる。どういうことか、詳しく解説しよう。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵) 【この記事の画像を見る】 ● 住民票に母を入れるかどうかが 「100万円超」の出費の差に! 父親の死後、ひとり暮らしをしていた母親が高齢になると、同居の検討を始める人も増えてくる。 同居をするなら、絶対知っておきたいことがある。それは「住民票を親と同一にするか、しないかでこの先の出費が大きく異なる」という事実だ。 分かりやすく「住民票」としたが、役所的に言い換えると「世帯」である。図は、現役で働いている自分が母親と同一世帯にした場合と、別世帯にした場合にした場合の「出ていくお金」の差額を試算したものだ。 詳しい試算の結果は後述するが、世帯を同一にするか別にするかで、母親の社会保険料(介護保険料、後期高齢者医療保険料)、医療費負担、介護保険を利用した場合の利用料の合計額は大きく異なり、その差額は10年で100万円超にもなった。世帯を同一にした場合の出費が、100万円超も高くなってしまったのだ。 FPなので、ある程度の差額が出るのは予想していたが、実際に試算してみると大きな差額になり、私自身も驚いた。なぜ、100万円超もの差が発生するのか、仕組みを見ていこう。
● 遺族年金で暮らす母親だけなら 「住民税非課税世帯」になる 試算の前提条件は次のように設定した。 ●子:50歳、会社員、東京都世田谷区在住 ●母:75歳、専業主婦で夫は死亡 ・収入は公的年金のみ(遺族厚生年金90万円+老齢基礎年金70万円) ・78歳大腸がんになり、手術・入院3週間、その後6カ月間、外来で抗がん剤治療を受ける ・80歳で要介護状態(要介護2)となり、5年間、在宅で介護サービスを利用する ●母が75~84歳の10年間で支払う下記の出費を試算 1. 介護保険料 2. 後期高齢者医療制度の保険料 3. がんの治療費 4. 介護保険のサービス利用料 前提条件のもとに10年間で4つの「出ていくお金」の合計額は次の通り。 子と同一世帯:247万2200円 母は別世帯:146万9500円 差額:100万2700円 母が別世帯になると、「出ていくお金」は約100万円も少なくなる。これはどういうことだろうか。 遺族年金収入は非課税で、老齢基礎年金の70万円は控除の範囲内のため、母の所得はゼロだ。住民税の均等割もかからない収入額のため、母が一人世帯だと「住民税非課税世帯」となる。 社会保険料も医療費や介護サービス利用料も、住民税非課税世帯に該当すると低く抑えられている。一方、母の所得がゼロであっても同一世帯に所得がある人がいると「住民税非課税世帯」にはならず、保険料や利用料が変わってくるのである。 具体的な出費を見てみよう。 ● 介護保険料と後期高齢者医療保険料に それぞれ30万円超の差 母にかかる社会保険料(介護保険と後期高齢者医療保険)を比較したのが下表である。 同一世帯か別世帯かで保険料が大きく変わるのが一目瞭然だ。10年間で見ると、どちらも30万円超の差が発生する。ちなみにこの2つの保険料は、母の年金から天引きされるので、同一世帯だと母の手取り額は減ることになる。 次はがんの治療費を比べてみよう。