プラ汚染防止条約、生産から使用後まで流出防止へ 議長が素案提示
年内の合意を目指すプラスチックごみによる汚染防止条約について、政府間交渉委員会のルイス・バジャス議長が条文素案に関する非公式文書を各国に提示した。交渉関係者への取材で31日判明した。生産から使用後までプラ製品のライフサイクルを通じて環境への流出防止策を講じることを締約国に義務づけることなどが盛り込まれている。 プラ汚染問題を巡っては、国連環境計画(UNEP)の意思決定機関「国連環境総会」が2022年、汚染根絶のための法的拘束力のある条約を24年中に作ることを決議。条約の内容について協議する政府間交渉委がこれまで4回開かれ、11月25日に韓国・釜山で開幕する第5回交渉委での合意を目指している。 毎日新聞が入手した文書では、製造者が製品使用後の廃棄やリサイクル段階まで責任を負う「拡大生産者責任」の考え方を導入し、プラ素材の使用量の削減に加え、再利用や修理をしやすい設計などを推奨するとしている。また、微小なプラスチック片を含むプラスチックの海洋など環境への流出防止策、廃棄物の適切な管理などを実施することを締約国に義務づける内容になっている。 一方、各国間で意見の隔たりの大きい石油由来プラの生産規制については、具体的な記載を避けた。代わりに素案では、既存の生産量と実際の需要に関する情報の欠如を解消することなどを条文に盛り込むことを提案している。 バジャス議長は「政治的意思があれば、法的拘束力のある文書を年内に策定するという共通のゴールに到達ができると信じている」と記した。 環境NGOグリーンピース・ジャパンの小池宏隆シニア政策渉外担当は、非公式文書について「比較的合意のある内容については進展がみられるものの、プラ汚染を根本的に終わらせるために必要な上流規制の書きぶりは交渉の難しさが反映されている。議長提案はアイデアレベルで、(釜山での交渉は)どうなるか予断を許さない」とコメントした。【大野友嘉子】