『ビートルジュース ビートルジュース』はなぜ支持を得た? 現代でも通用するメッセージ
ティム・バートン監督の特異なセンスとイマジネーションが爆発し、その才能を広く知らしめることになったホラーコメディ映画『ビートルジュース』(1988年)。常軌を逸した「人間怖がらせ屋(バイオエクソシスト)」ビートルジュースを演じたマイケル・キートンが注目され、1990年代のアイコンとなってゆくウィノナ・ライダーが、ゴス少女リディアを演じてブレイクを果たした一作でもある。 【写真】『ビートルジュース ビートルジュース』場面カット(複数あり) そんな『ビートルジュース』が36年もの時を経て、続編『ビートルジュース ビートルジュース』なる“不穏な”題名にて、嬉しい再登場を果たした。しかも、ティム・バートン監督本人が手がけ、マイケル・キートン、ウィノナ・ライダー、キャサリン・オハラが再び出演している事実も、前作のファンを歓喜させている。また、オリジナルキャストに加え、ドラマシリーズ『ウェンズデー』のジェナ・オルテガをはじめ、ウィレム・デフォー、ジャスティン・セロー、モニカ・ベルッチ、アーサー・コンティなどの新キャストが出演している。 ここでは、この奇跡の続編といえる本作『ビートルジュース ビートルジュース』が、なぜ大きな支持を得ることになったのかを、さまざまな視点から考えていきたい。 “古巣”でもあるディズニーで撮った実写映画『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)の成功によって、ディズニーの過去の名作アニメーションの実写化シリーズの道を拓いた功績がありながら、同じく実写化作品『ダンボ』(2019年)では興行面や批評面で伸び悩み、製作上の問題からディズニーとの関係を終わらせる旨の発言をするなど、活動が停滞していたと感じられるバートン監督。それだけに、ドラマシリーズ『ウェンズデー』での成功を経て、原点の一つといえる『ビートルジュース』に回帰したという意味において、本作の公開は感慨深いものがある。 前作同様、舞台となるニューイングランドの小さな町を俯瞰した光景を、模型をも利用したカメラの移動で映し出すところより、本作はスタートする。川の上には、前作の事故現場となった、ランドマークのかわいい屋根付きの橋や、もちろんメインの舞台となる、丘の上の家も確認できる。やはり前作を想起させる、ダニー・エルフマンの不気味ながら心弾ませるスコアが被さる演出も用意してくれていて、同じ時を経てきた観客は懐かしい気分に包まれるはずである。あたかも、30年以上前に飲んだワインのヴィンテージと同じ年、同じ銘柄のワインを、いま抜栓したかのような、魅惑的な体験である。 あの丘の上の家は、いまでは“幽霊屋敷”と噂され、そこに住む、歳を重ねたリディア(ウィノナ・ライダー)はTV番組を持つほど人気のある霊能力者として活躍していた。長い年月の間にであったパートナーとは死別しているが、彼女の側には一人娘アストリッド(ジェナ・オルテガ)がいる。しかし、年頃のアストリッドはことあるごとに母親に反抗し、二人の仲は良いものとは言いづらいのが悩みの種だ。 リディアの母で、いまではアストリッドの祖母でもあるデリア(キャサリン・オハラ)は、落ち込む娘を達観して眺める。「私を困らせていたゴス少女はどこへいったの?」……そう、“変わり者”を自称していたリディアもまた、子どもへの悩みを抱え、自分の母親の当時の感情を理解するようになっていたのである。 ちなみに、父親のチャールズ役だったジェフリー・ジョーンズは、今回出演していない。じつは彼は、プライベートにおける問題が報道された経緯があり、出演が見送られたと思われるのだ。彼の演じていたチャールズについては、劇中で度重なる不運によって死去していたと説明され、俳優を必要としないようにアニメーションで表現されている。この皮肉なユーモアとセンスは、ティム・バートンに多大な影響を与えていただろうエドワード・ゴーリーの絵本のようである。その点では、弱みが作家性でカバーされているのが興味深い。