急成長するショッピングエリア 「港区マーケット」の可能性を探る
商業施設など特定の機能ではなく、あくまでも街全体が魅力を追求し、そのためにどうコンテンツをそろえるべきかを考えるという。現在、それぞれのヒルズが抱える機能は、物販や飲食のほか、オフィスや住宅、美術館、学校・保育園、広場・緑地、予防医療センターなど多岐にわたる。
街づくりは建物を作って終わりではない。住む人、働く人、訪れる人たちの関係を深める日々の取り組みが欠かせない。いま力を入れているのが「ヒルズアプリ」と独自のイベント企画だ。ヒルズアプリは利用者の利便性を高めると同時に、顧客データを集積・分析するツールになっているほか、さまざまな情報発信を通じてコミュニケーションを生む。栗原常務執行役員はその具体的な内容、データ活用、年間1200ほど実施するというイベントの事例を紹介しながら、「これまで売り場としての機能が強かった商業施設は、今後企業が顧客とのエンゲージメントを高める場に変貌するだろう」と結んだ。
六本木ヒルズに21年、「エストネーション」の強さの理由
第2幕ではセレクトショップ「エストネーション」の大田社長が登場した。六本木ヒルズ開業時から21年にわたって旗艦店を構えてきた同社が語る、港区マーケットの本質と六本木ヒルズとの連携した取り組みが面白い。
「投資価値があるか?という視点が、港区マーケットには欠かせない」。大田社長によれば、富裕層は自由に使える資金が潤沢にあるからこそ、“多くのものを買う”よりも“より良いものを選択する”傾向にある。だからこそ、幅広い顧客に刺さる商品を開発するのではなく、特にファッション感度の高いオピニオンリーダーに合わせた価値提供をする。
森ビルの六本木ビルズ担当者とは定期的に商況を共有するミーティングを重ねる。六本木ヒルズ全体の動向を知るだけでなく、「ヒルズアプリ」の会員データも確認することで、潜在顧客の需要を分析し、店頭でのさらなる提案につなげている。「六本木ヒルズ内レジデンスに住むお客さまにとっては、『エストネーション』は重要なインフラの一つだから」と店の存在意義を語った。