七五三「撮影トラブル」の背景に「マッチングサービス」か 神社が苦慮するカメラマンの「マナー違反」とは
fotowaの撮影件数は16年度、612件だったが、23年度は2万9193件と、大きく成長した。現在、カメラマンの登録数は約1300人。「現役ママ・パパカメラマンも多数」(fotowa)という。 人気の理由は撮影料金の安さだ。七五三の撮影の場合、2万円程度と従来の約半額。しかも撮影データをもらうことができる。 ■神社は「映え写真」撮れる無料セットか Lovegraph、fotowa、OurPhotoは共同で「神社仏閣撮影ガイドライン」を作成し、昨年10月に公表した。3社は「本件は、出張撮影業界全体で取り組むべき重要な課題としてとらえています」としている。 自身も出張カメラマンで、「ファミリースタイルフォト」代表の織田隆一さんはこう話す。「神社は神聖な場所であるにもかかわらず、いわゆる『映え写真』が撮れる無料の撮影セットのように思っているカメラマンが一部いるように思います」 織田さんは業界の行く末を案じ、6年ほど前から全国的な写真イベントで「神社での撮影のあり方」について、神社の人と対談したり、撮影マナー講座を開催したりしてきた。 マッチングサービスが登場する以前は、カメラマンを目指す人の多くは写真学校で撮影スキルを学んだ後、先輩カメラマンから現場で指導を受け、マナーも含めて、さまざまなノウハウを身につけてきた。 だが、マッチングサービスではそうした撮影マナーを学ぶ機会がほとんどない。 そして、マッチングサービスではカメラマンは顧客のレビューによる星の数で評価される。 ■レビューの星の数が命 「出張カメラマンにとっては、レビューの星の数が命です」(織田さん、以下同) 利用者が撮影後に書き込むレビューに、星がいくつつくかでカメラマンの人気が決まる。 「『映える写真』を撮らないと星がもらえない。そのために、他の参拝者や神社への配慮が二の次となってしまっているところはあると思います」 織田さんは前述の通り、業界団体によるガイドラインの作成だけでは撮影マナーの改善は困難だと感じている。 「まだ多くの神社では出張カメラマンによる撮影が認められていますが、撮影禁止になる神社はこれからも増えるでしょう。業界として取り組みを強化するだけでなく、カメラマン自身が意識して、モラルやマナーの向上が求められます」 (AERA dot.編集部・米倉昭仁)
米倉昭仁