表敬訪問で「写真撮り直し」をお願いしたパリ五輪出場のダンサー。その理由が意外でかっこよかった
パリ五輪で初めて実施されたブレイキン。取材した記者には、大会でのダンスバトル以上に印象に残ったシーンがあった。男子で4位だった半井重幸(22)(ダンサー名・SHIGEKIX)の立ち振る舞いだ。 【画像】「銃殺を提案する」と脅迫めいた言葉も 中国でも五輪選手に中傷殺到
昨年12月、生まれ育った大阪府大阪狭山市の市長を表敬訪問したSHIGEKIXは、スーツをぴしっと着こなし、市役所に現れた。最初に写真撮影をし、市長と対談をしてしばらくたった時だった。彼は突然「写真の撮り直し」を求めた。その理由はちょっと意外で、でも「らしい」ものだった。 大会は終わったが、ダンサーたちはパリでさまざまな顔を見せてくれた。彼らの知られざる姿と、日本に根付いたブレイキンの文化を紹介したい。(共同通信=河村紀子、西岡克典、小島佳祐) ▽撮り直しを求めた意外な訳 写真撮り直しの理由は何なのか。SHIGEKIXはこう切り出した。「(シャツの)ボタンしめてなかったのと、ピアスついてたんで、もう一回撮らせてほしいです」 「あかんの?」と市長。記者も、むしろ耳に光るピアスが素敵だなと思っていたくらいで、気にもしていなかった。だが「我々ストリートからなんで、もちろん良い部分はいっぱいありますけど、こういう時にしゃきんとできてないと」と返した。
この間、終始笑顔。自らのふるまいが競技のイメージに影響するかもしれないという所まで気にしていた。記者は率直に「かっこいいな」と感じた。彼はどんな人物なのだろうか。 ▽「どう世界と渡り合うか」意識 SHIGEKIXは7歳でダンスを始め、11歳で海外の大会に出場し始めた。常に意識しているのは「どう世界と渡り合うか」だという。 大阪学芸高(大阪市)ではさまざまな競技で活躍する生徒たちと同じクラスに在籍した。2年の担任だった藤川真也さん(29)は「自分が目指すものや、そのために何に時間を費やすのかといった具体的な話ができていた」と光るものを感じていた。 海外遠征が多くても「それを言い訳にせず、提出物も欠かさない。どの授業も一生懸命だった」と藤川さん。特に「力を入れたい」と話していた英語に熱心で、放課後に教員から教わる姿をよく見かけたという。 3年の担任だった小笹拓さん(38)も、当時から「世界と戦うには」という話をしていた姿を覚えており、「スケールが大きかった」と笑う。