表敬訪問で「写真撮り直し」をお願いしたパリ五輪出場のダンサー。その理由が意外でかっこよかった
国内外の大会で優勝を重ね、テレビや街中の広告でその姿を目にする機会が増えた。藤川さんは「ブレイキンを広めたいという思いがかなっているのかな」と喜ぶ。 ▽笑顔絶やさす、パリを楽しんだ SHIGEKIXはパリでも常に笑顔だった。登場する時も、バトルが終わっても。「胸を張って言えるくらい楽しかった」と最後まで笑みを絶やさなかった。キレのある動きと、音楽にぴたりとはまったダンスも含め、「かっこいい」を体現した。 五輪を通じて初めて彼を知った人も、テレビ画面からその「かっこよさ」を感じられたのではないだろうか。 ▽「地球規模、宇宙規模で見たら…」 男子のもうひとりの選手も紹介しよう。1次リーグの第3試合。DJが音楽を流すと、大能寛飛(19)(HIRO10)は得意のパワームーブ(回転技)を次々に繰り出した。床に頭を付けて回転する高速のヘッドスピンに観客は大盛り上がり。ステージ上に大の字に倒れ込むと、観客の歓声はひときわ大きくなった。
ジャッジの結果は敗北。観客は「納得がいかない」と言わんばかりの大ブーイング。「感謝の気持ちが涙になって出てきた」。MCの男性2人が涙を流すHIRO10の腕を取り高く挙げると、会場は総立ちに。“HIRO10”の存在を印象づけた瞬間だった。 1次リーグ3敗で敗退が決まった後のコメントにもインパクトがあった。「すげー悔しかった」に続けた言葉がこうだ。「地球規模とか宇宙規模とかで見たら、こんなちっちゃいジャパニーズBボーイが負けただけ」。独特の表現で振り返った。 「オリンピックを通して思ったことは、人生面白いってことですね」。取材の中で、何度も「面白い」と口にした。 ▽ダンス未経験の父が研究 そんなHIRO10の練習を支えたのが父善行さん(45)だ。ダンス未経験ながら動画で研究して手ほどきしたり、遠方での練習に付き合ったり。「ともに凝り性」という親子は力を合わせ、技を磨いてきた。 小2の時、妹にダンスを習わせようと善行さんが連れて行った教室で「やってみたら」と誘われたのが、ブレイキンとの出会いだ。