北朝鮮で毎年恒例の「人民軍への兵器装備奉献」キャンペーン “月収の数倍”にあたる1人10ドル相当の献金を求められ、担当の地方政府当局が苦慮
北朝鮮では12月1日から30日まで毎年恒例の「人民軍への兵器装備奉献キャンペーン」が今年も展開されている。例年ならば、学生や住民が軍事兵器の製造などに役立つように、金属くずなどを集めて軍に提供していたが、今回はそれに代わりに現金で市民1人当たり10米ドル(約1570円)相当の献金をするよう求められていることが分かった。
10ドルは北朝鮮ウォンに換算すると約9万ウォンと一般的な市民の月収の数倍にもなり、献金を取りまとめる責任を持つ地方政府当局は頭を抱えているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。 このキャンペーンは、金正恩朝鮮労働党総書記が朝鮮人民軍の最高司令官に就任した2011年12月30日を記念して、2012年以降、毎年12月に行われている。 昨年までは学生や市民らが金属くずなど拾い集めて、政府に届け、それらを元にして戦車や装甲車を製造するという形で進められてきた。 しかし、今年の同キャンペーンの目的について、朝鮮労働党中央軍事委員会は「人民の寄付によって製造するのは従来の戦車や装甲車ではなく、攻撃型無人航空機(ドローン)だ」としており、これが従来の金属くずでなく現金に代わった理由と受け止められている。 しかし、10ドルは一般市民が楽に献金できる額ではない。割り当てられた金額を収められない場合は、地方の担当者が責任を負わされることになる。 このため、ある地方政府の当局者は管轄区域の鉱山の金属資源などを売って、何とか割り振られた資金を集めようとして四苦八苦しているという。