『マイナ保険証』の「セキュリティは病院に“丸投げ”」大きな負担に診療所院長が苦慮 対策不足だと被害者なのに罰せられる恐れも
「マイナ保険証義務化」の是非が、法廷で争われている。 マイナ保険証の義務化に対し、システムに対応する義務はないと、医師・歯科医師ら1415人が国を訴えた裁判では、東京地方裁判所が原告の訴えを棄却する判決を言い渡したことを受け、原告側が控訴している。 【写真】『マイナ保険証』セキュリティは病院“丸投げ” 医師たちは裁判を起こさなければならないほど大きな負担が医療現場にかかっていて、廃業を考える医師が相次いでいると話す。「マイナ保険証」によって生じかねない医療崩壊の危機を訴える、現場の声。 「国はデジタル化を義務付けたのに、必要なサポートを行わず医療機関に丸投げ。目先の対策に追われた結果、医療機関のデジタル化は問題が山積みです。そのうえさらに私たちの税金が投入されそうな動きもあります」 こう訴えたのは、さいたま市の山崎泌尿器科診療所の山崎利彦院長。詳しく話を聞いた。
■「カードリーダー買い足し」でさらに“税金”巨額投入か
山崎利彦医師: 2024年5月、国会で「マイナ保険証のスマートフォン搭載を来年春にも始める」との法案が成立しました。確かに便利になる側面もあるでしょう。しかし問題があります。 現在のカードリーダーではスマホは読めないのです。読み取り部分にスマホが入りません。ではどうするのかというと、今のところ、厚労省は「スマホ用の読み取り機を新たに設置する」としています。 これらの費用はどうなるのでしょうか。このためにまた多額の税金を使うならとんでもないことですし、かといって医療機関の負担になるのも、とんでもないことです。 現行のカードリーダーは、必要な周辺器等を合わせると1台あたり40 万円ほどかかります。新しいものは読み取るだけの汎用カードリーダーとのことですから、そこまで高価ではないでしょうが、おそらくソフトウェアが必要になると思われます。新しく開発するのかもしれませんし、いずれにせよお金がかかってきます。 全国の病院、一般診療所、歯科診療所を合わせて約18万施設、調剤薬局が約6万施設あるので、合計約24万施設。さらに病院は1施設あたり3台ありますから、全部で26万台ほどのカードリーダーが必要となります。いったいいくらかかるのでしょうか。 マイナ保険証がらみの事業で既に3兆円が使われていますが、この先どうなるのか、非常に不安を覚えます。