意外に知らない?明大と東大、井の頭線「2つの大学駅名」誕生秘話 開業当初は少々物騒な名前だった「明大前」
当時の京王電気軌道社長の井上篤太郎、小田原急行鉄道社長の利光鶴松はともに、明治大学の前身である明治法律学校の出身であり、火薬庫跡地へのキャンパス誘致、駅の統合および駅名改称には、2人の尽力もあったとされている。 明大前駅のホームは、京王線が2階、井の頭線が堀割の中の地下1階にあり、どちらも対向式2面2線となっている。駅舎は1つで北西側1階にある。ただし駅舎周辺は南側から続く窪地になっているので、京王線の線路は駅の左右では地平にある。
駅舎から京王線の100mほど北を並行して走る甲州街道までは、その名も明大通りという短い道路があり、幅広い歩道橋を使って、甲州街道の北側にある明治大学和泉キャンパスにアクセスすることになる。 ■駅北側は学生街 駅舎周辺を含めた京王線の北側は飲食店、特にラーメン屋が多く、学生街であることを実感する。逆に京王線の南側は、駅舎がないこともあって店は少なく、住宅地が広がっている。 2023年度の1日平均の乗降人員は京王線が5万1379人、井の頭線が3万9452人。ただしこれ以外に乗り換え客が15万人近くおり、合計すると約25万人に達する。構内がいつもにぎわっているのは、乗り換えでここを使う人が多いからだろう。
京王電鉄広報部によると、定期利用と定期外利用の比率は、京王線が61.6:38.4、井の頭線が55.6: 44.4。西は八王子市や多摩ニュータウンまで通じ、東は都営地下鉄新宿線に乗り入れる京王線のほうが、通学で利用する人は多いことが想像できる。 大学というと、受験シーズンに初めてここを訪れるという人も多いはずだ。明大前駅ではこうした人たちに向けて「受験生応援企画として、合格祈願の絵馬をモチーフにした切符風のグッズ配布や、駅の案内表示パネルに受験生応援メッセージを流している」(同社広報部)という。
ところで甲州街道の北側には、玉川上水の水道橋が残っており、井の頭線の線路の右側に、複線の線路を通せそうなスペースがある。ここは帝都電鉄の前身の1つである東京山手急行電鉄が計画していた、「第二の山手線」の名残である。 小田原急行鉄道の社長だった利光は、当時いくつかの鉄道の経営に参加していた。その中に東京山手急行電鉄と、渋谷―吉祥寺間の路線を計画していた渋谷急行電気鉄道があった。 両線は明大前駅で接続することが計画されたものの、東京山手急行電鉄の建設は資金面でも用地面でも困難であることから断念され、現在の井の頭線の区間のみが開業したという経緯なのである。