「ひとりで戦っているのではない」鉄人・佐藤慎太郎が競輪場へ向かうタクシーでの“貴重な出会い”語る
◆netkeirin連載コラム「佐藤慎太郎の101%のチカラ」 全国300万人の慎太郎ファン、netkeirin読者のみなさん、暖かい陽気とともに気持ちも盛り上がってきた佐藤慎太郎です。今回はレースの振り返りに加え、大切な気づきを得た出来事もあったので、背筋を伸ばして文章を綴っていく。
与えられた番組について
まずは松山記念の振り返りから。強い選手が集まり、競輪場は活気に溢れていた。とてもハイレベルなシリーズだったんじゃないかな。松山のファンは本気でアツい。オレにもたくさんの声援を届けてくれた。ありがたい限り。 さて、二次予選はニュースにもなったけど「番組を見た時に『これが今の佐藤慎太郎の価値』だと喝を入れてもらった」と現場でコメントをした。今をときめく犬伏湧也、地元愛媛の佐々木豪との対戦で、バシッと地元の主力を当てられた番組だったからね。 選手は与えられた番組でベストを尽くすのみ。だが、ここは負けられないと気合が入った。前は連係実績豊富な一成だし、S級S班のプライドもある。否定されたくない「格」を守る気持ちが高まった。結果として一成の巧い先行策のおかげで、ライン上位独占。これはうれしかった。 でも勝利をうれしがるだけではなく、喝を入れてもらったことは忘れずにいようと思う。「自分が第何レースに出走するのか」や「どんなメンバー構成で走るのか」といった番組編成は選手にとって重要な指標のひとつ。自分の「格」や「存在感」を示すものだからね。S級S班として常に主役を張れるように精進しなくてはならない。
「完璧な走りで失格」 これが本当に悔しい
松山といえば最終日の失格について書かなくてはならない。この失格は心底悔しいものだった。最終2センターから4コーナーにかけて渡部哲男と坂井洋の間にコースを取っていくこともできたが、その選択は後方の一成を後輪で払ってしまう危険性のあるコースだった。それを避けつつ1着でゴールするためには渡部哲男の内に進路を取る必要があった。 選手の配置もスピード状況もかなりクリアに見えていたし、脚にも余力があり、踏み込んでいく感触も申し分ない。自分の中では好調の時期に戻っている感覚というか、完璧な走りができていたように思う。1着までのルートがロックオンされた状態で、そのルートを走り切ってのゴール。最近のリズムの悪さを払拭できたような1着入線となったが、失格の判定が下された。 目の肥えたファンのみなさんも気がついてくれたみたいだけど、動きのキレも判断の冴えも実感しながら伸びれたわけだから、かなり手応えがあった。それだけにすごく悔しい失格となった。ルールの中で走るのが大前提だから失格をした以上、自分の走りに非があったということ。これは覆らない(当然覆したいとも思ってない)。 あの場面はオレが外に持っていったことで哲男が外側に膨れて洋に当たったのではなく、哲男を減速させたことで坂井洋が内側に差しこんでしまった形。完璧だと自分が思う走行でも、相手がいればさまざまな要素が噛み合ってしまう。それらがマイナスの方に集約してしまった一戦だったように思う。 今は次に同じことを起こさないように反省し、レース映像を徹底分析したので対策は見つけている。松山のデカい声援に“勝つ姿”で応えたかったが、本当に残念。この失格を次に活かせるように自分を戒めて出直したい。