スペースマウンテンが7月で運行終了 フリーアナウンサー神田愛花「子どもの頃に気づけなかったこと」
1983年、東京ディズニーランドがオープンした。私は当時3歳でディズニーデビュー。以来、遊園地といえばディズニーランドになった。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~53回)はこちら 初めてのジェットコースターは、スペース・マウンテン。宇宙空間を模した暗闇の中を疾走するため先が見えず、突然四方八方から重力がかかる。それが衝撃的で、私のNo.1ジェットコースターは、40年間ずっとスペース・マウンテンだった。 ところが今年7月で運行終了が決定。これまで楽しませてくれたお礼にと、中学高校時代の仲良し4人組で「数年ぶりに乗りに行こう!」ということになった。 開園の1時間前に到着したのに、すでにすごい混雑と熱気。私たちは最低2回、スペース・マウンテンに乗れたらOKというつもりでいたが、周りに感化され、「いくつアトラクションに乗れるか挑戦!」という、学生時代のノリに変わった。 入場するや否や、スペース・マウンテンに競歩で直行。並んでいる間に専用アプリで2回目の乗車予約も済ませ、目的は達成確実になった。「よぉし! 次のアトラクションだ!」。 現在、人気アトラクションに乗るには、長蛇の列に並ぶか、1500~2000円払って並ばずに乗れる優先乗車枠を買うか、二つ方法がある。私たちはこの有料システムが初めてで、夢の国も資本主義になったことにショックを受けた。 ただ、私たちはもうオバサン真っ只中。仕事をし、自分のことは自分で面倒を見られるお年頃。しかも足腰も弱り始めている。2000円で楽ができるなら……「片っ端から買っちゃおう!」。優先枠を買いまくった。 並ばないとこんなにも疲れないのかと感動した。そんな時、120分待ちの列に並ぶ学生さんを見て、ふと(この子たち喧嘩にならないのかな?)と心配になった。 2000円。経済事情によって払えるかどうか、判断が分かれる絶妙な金額だ。友達が”買う派”で、自分は”並ぶ派”だったら? 今の私なら「お金ない!」と言えるが、思春期だと難しい。かといって「私は並ぶから、◯◯ちゃんは買って先に乗りなよ!」ともならないだろう。 楽しい時間を過ごすはずのディズニーランドだが、有料優先枠があることで便利と感じる人もいれば、友情にヒビが入ってしまう人も!? それならば、根性で並ぶしかなかった昔のほうが幸せだったのでは? と思ってしまった。 また、移動中にパレードが横切った時に一人が「あ! あれ、プリンセスじゃない!?」とディズニープリンセスたちを発見。その可愛さに「おぉー!!」と全員目を一瞬輝かせたのだが、プリンセスを演じている方を見て、「今もやっぱり外国人なんだねぇ」と、口を揃えた。 ◆子どもの頃は気づけなかったこと これまで、プリンセスを外国人が演じている光景に、違和感を抱いたことはなかった。だが、私たちは社会で揉まれてきたオバサンだ。男女平等社会と言われても、生物としての違いがある以上、その壁を完全に取り払うことは難しいと感じる経験もした。世の中には、どう足掻いても、自分ではどうにもならない壁があると知ったからこそ思うのだ。もしかしたらここには、人種による顔の作りの壁があるのかもしれないと。 すべてのプリンセスを見たわけではないので、この考えは違うかもしれない。だが、壁を受け入れながらも頑張っている人がいると考えると、自分も頑張らなきゃと思えた。 夕食はお酒が飲めるレストランに行った。私たちは、お酒が飲めれば夢の国だって居酒屋と同じ。この日感じた様々な違和感について意見を言い合いまくった。そして、「夢の国の魔法にかからないほど、私たち自我が強くなっちゃったのねー!」と大笑いして、締めくくった。 この日は10のアトラクションに乗れた。満足だ。年齢を重ねた私たちなりの、これまでとは違う楽しさと充実感。嬉しくなり、デイジーダックのぬいぐるみを買った。私はディズニーキャラの中で、デイジーが一番好きだ。理由は、頻繁に立腹しているイメージがあるから。”良くしたい!”と思うからこそ、ご立腹が止まらないんだよね。私と似た者同士のデイジー。今はソファに座り、「今日の文句は? 聞くよ!」とでも言っているかのような顔で、私を見ている。 かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年6月21日号より イラスト・文:神田愛花
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