「一人で1億円近い投資も」浅草や京都のマンション・ホテルをデジタル証券化、オルタナが提案する個人投資家の新たな選択肢
株式投資への関心が高まっている現状はどう影響しているのか
2024年は新NISAが始まり、日経平均が4万円台に突入するなど、株式投資への関心が高まっている。こうした地合いがデジタル証券のマーケットにどう影響しているか問うと、上野氏は、フォローとアゲンストの両方が吹いていると答える。 「相場が高値に近づいてきていると感じている投資家からは、資産を退避させる際の受け皿として見られているし、不動産マーケットが比較的好調なので、その波に乗ろうという方もいる。逆に、『株のほうが儲かるのではないか』『金利が上がるので不動産は今後ネガティブでは』と考える方もいる。両方の風が吹いて凪の状態にあるとも言える」 ただ、今後はよりフォローの風が吹くことも予想している。「直近のご相談の中には、『株も頭打ちだと思う』というものがあり、ある程度固定の、手堅くキャッシュフローが得られる商品に対する期待の声も寄せられている」という。 「日経平均が今4万円でも、翌月には3万5000円になるかもしれない。そういう“変わること”に対する怖さがクローズアップされる局面は必ずやってくる」と上野氏が話すように、上げ相場がずっと続くわけではなく、今後は調整、下落の局面もいつかは訪れる。そう考えれば、ALTERNAのような商品が「刺さる局面がくる」(上野氏)のは時間の問題かもしれない。
2年目の目標は初年度の3倍、不動産以外の物件の証券化
もうすぐ迎える2年目の予定や計画を問うと、「目標は初年度の3倍の300億円の規模感にすることと、毎月商品を出していくこと。さらには今までは売るだけ(買ってもらうだけ)だったが、今後は既に保有している物件を売りたいというニーズも出てくるはずなので、セカンダリも視野にいれた事業展開をしたい」という。 不動産以外の案件も出したいというが、それはどんな物件になるのだろうか。 「リース会社が保有している、何かしら利用料などを生むものなので、船舶や航空機などが考えられるが、話題性を狙いたいとは思っている。あとは海外の案件も狙いたいが、こちらは商品性が大きく変わるところもあるので、もう少し時間がかかるだろう」 事業は順調に成長しているが、今後の課題は何だろうか。これについては「業界として認知度を高めること」だという。セキュリティ・トークン、デジタル証券が知られるようになってきたとはいえ、まだまだニッチで、NISAに比べれば圧倒的に認知度がない。 そこで進めているのが、他社とのアライアンスだ。最近も、東京スター銀行との業務提携を発表している。発表によれば、同行ウェブサイトでALTERNAの情報提供を行い、顧客の資産形成を支援するという(同行のセキュリティ・トークンの取り扱いは、地域金融機関としては初めて)。 「多くのお客さんを持っていらっしゃる企業とアライアンスを結び、面を広げていきたい」という上野氏。デジタル証券分野の成長にともなって競合他社の参入も増えそうだが、意に介さないどころか、歓迎したいと話す。 「特に今年は、結構な数の運用会社の参入がありそうですが、そうなると商品もバラエティ豊かになり、投資家の選択肢が増えることになるので、参入は歓迎したい。まだライバルとかいう段階ではなく、一緒に盛り上げていって欲しい」 これまでのところ、顧客の多くが男性だというが、組成する商品によっては女性顧客の拡大の可能性があることも実感している。 たとえば今年1月末に発表した「そだつ貯蓄」は、それまで同社が提供してきた“エクイティ性”の商品と比べて、投資期間が短く、より元本保全性が高いという特徴がある“デット性の”商品だが、従来の商品よりリスクを抑えたこの新商品の購入者の割合を見ると、あきらかに「女性の比率が上がった」という。 この「そだつ貯蓄」は、大手銀行の担保付融資に相乗りできるという新商品シリーズ。1号案件は同社が組成・運用するデジタル証券ファンドの投資先である草津温泉旅館「湯宿 季の庭・お宿 木の葉」を対象とした、三井住友信託銀行の融資を商品化している。 不動産ファンド(不動産を保有する借主)への銀行からのシニアローン(返済順位が最も高いローン)について、銀行に保証を提供することで得られる保証料を主な配当原資としており、期待できる利益は株式などと比べれば少ないものの、その分安全で、預貯金よりは高いリターンが期待できる。 「日本の個人金融資産約2,100兆円のうち半分以上を現預金が占めることからも、リスクを回避したい、安全性の高いものが欲しいという方は少なくありません。預金に比べて相対的に金利が高い『そだつ貯蓄』シリーズなら、手軽に始められる預金代替商品としての機能を果たせる。(こうした新商品の提供や、ALTERNAの拡大・充実を進め)個人投資家の選択の幅を広げていきたい」 |インタビュー・文:瑞澤 圭|編集:CoinDesk JAPAN編集部|トップ写真:三井物産デジタル・アセットマネジメント代表取締役社長の上野貴司氏(多田圭佑)
CoinDesk Japan 編集部