芥川龍之介『蜘蛛の糸』の「お釈迦様の声」を想像できない人に足りてない習慣とは?
長尺の動画は見てもらえません。見る側にとって環境はどんどん楽になり、脳を働かせなくてもいいようになっているのです。 しかし、心を耕して感性を豊かにするには読書が不可欠なのです。宮崎監督ご自身が大変な読書家であることは言うまでもありません。その豊かな感性があれほどの数の名作を生んだ源泉となったのでしょう。 ● 毎日本を読むことは 読書力を鍛える「知の筋トレ」 一般に「若者は本を読まない」などといいますが、では今の高齢者は本を読んできたのでしょうか。というのも、若者の活字離れが指摘されはじめたのは、実は1980年前後と言われています。 ちょうどバブル期に青春を謳歌していた世代もそこに含まれ、その人たちの多くがいま還暦を迎えようとしています。つまり、全世代的に日本人が本を読まなくなっているという指摘もあるわけです。 マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した調査によると、半年間に読む本の量を問う質問に対し、もっとも多かった答えが「1冊未満」で、実に47.9%に達し、さらに40代男性に限っていえば49.1%に達したといいます。
1冊未満ということは、簡単にいえば1冊も読んでいないということです。つまり40代のおじさんの2人に1人は本を全然読んでいないということになります。 私は20年以上前に『読書力』(岩波書店)という本を出しましたが、その当時に全国で2万件以上あった書店の数は、現在は1万件近くに半減しています。 Amazonなどのネット通販の浸透による影響もあるとは思いますが、理由はそれだけではないでしょう。日本人が本を読まなくなったというこの1点につきます。 読書とはスポーツと少し似たところがあって、毎日本を読むということは、読書力を鍛える知の筋トレをしているようなものです。 筋力をつけるには積み重ねが必要ですが、積み重ねてさえいれば筋肉は必ずつくということ。読書力も同じです。トレーニングは嘘をつきません。そのためにできるだけ良書と呼ばれる本を選ぶことが必要となります。
齋藤 孝