芥川龍之介『蜘蛛の糸』の「お釈迦様の声」を想像できない人に足りてない習慣とは?
日本人は本を読まなくなったと言われている。読みたい本、読まなければいけない本がたくさんあるのにYouTubeばかり見てしまうという人も少なくないだろう。しかし、40代で身に付けた読書習慣が、老後を豊かに変える魔法の杖となるかもしれない。多くの日本人が本を読まない時代に「読書力」を身に付ける方法とは?本稿は、齋藤 孝『40代から人生が好転する人、40代から人生が暗転する人』(宝島社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 動画を見るよりも 読書が疲れるのはなぜか 40代から何か新しいことをはじめてみるというのは、考え方としては「第2の部活人生」とでもいえるのではないでしょうか。 20代~30代で好きなことをそれなりにやり、40代という人生の2回り目から、部活的なことをもう1個くらいはじめてみる。 仕事での悩みや、もやもやした気持ちを抱えている人も、「部活」で吹っ切れればまた明日と向かい合うことができます。その積み重ねがこの先の50代へと繋がります。 そのうえで、お金も時間もあまりかからない、もっとも無理のない形ではじめられる1つが読書ではないでしょうか。40代から自分の中で「読書部」をスタートさせてみるということです。 私は常々「読書とは心を耕す行為」だと言い続けており、良書を1冊読むと心は豊かに耕され、後に様々な形で花を咲かせると思っています。 文豪の名文を読むことは、彼らの辿った道を私たちが自分の足で踏みしめてみることであり、時代を超えて心を重ね合わせる行為でもあります。
読書は習慣化することが大事です。10代や20代でほとんど本を読んでこなかったという40代の人にとっては、ある程度ボリュームのある書籍を1冊読了するのは、それなりに負荷のかかる作業となるでしょう。 ユーチューブの映像ならずっと見ていられるのに、なぜ読書は疲れるのかといえば簡単な話です。映像のほうが脳は楽ができるからです。 人の脳というのは入ってくる情報が少ないほどそれを補おうとしますが、映画は黙っていても映像や音が情報として視覚や聴覚をとおして脳に飛び込んできます。 ● 登場人物の声をイメージで補い 脳の「聴覚野」がフル回転 しかし、本はこちらから狩りに行くように、読みに向かっていかないと入ってきませんし、理解もできませんので、映像作品を見るときより脳が活発に働いているのです。 たとえば、小説に登場する人物の会話部分は、実際には声が聞こえてきませんが、想像上の声で脳の「聴覚野」という部位が活性化しているのだそうです。 芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を読んでいるとき、人はお釈迦様の声を「こんな声かな」と無意識にイメージして脳内で再生し、表情を空想し、金色の蕊(ずい)の「何ともいえない好い匂い」がどんな香りであるかを、脳をフル回転させて想像しているのです。