芥川龍之介『蜘蛛の糸』の「お釈迦様の声」を想像できない人に足りてない習慣とは?
国木田独歩の『武蔵野』を手に取って開き、「澄みわたった大空が梢々の隙間からのぞかれて日の光は風に動く葉末々々に砕け、その美しさ言いつくされず」という文を読むとき、その美しい景色を想像の世界で描きながら、今すぐにでもトレッキングに出かけたい気持ちになるのです。 そう考えると、小さな子どもへの絵本の読み聞かせが、感性や想像力、共感力、語彙力などを育てるうえで大きな効果があり、脳の発育にもいいというのは大いに頷けます。 小学生が宮沢賢治の『やまなし』を読んでいるとき、2匹の蟹やクラムボンをどれだけ自由にイメージしているのか、大人の私たちにはなかなか想像できない世界です。 ● アニメ界の巨匠・宮崎駿監督が 語る絵本の重要性 40代の皆さんに小さなお子さんがいるのであれば、時間の許す限り絵本を一緒に読んであげてください。読み聞かせがお子さんの心を豊かに耕してくれます。 誤解していただきなくないのは、アニメや映画などの映像作品が良くないと言っているのではないのです。ただ、映像だけを子どもに見せて、本を読む機会を十分に与えないというのは、あきらかに足りていないということなのです。
事実、アニメ界の巨匠である宮崎駿監督ご自身が、著書『折り返し点』(岩波書店)で次のように仰っています。 「絵本とアニメーションの関係で言えば、いい絵本をアニメーションにしてしまっていいのかという問題が僕らの間にはあります。 絵本は、余白だらけで、逆から読んでもいいですし、好きなところだけ見てもいいですし、とにかく一度通過した絵本を自分の好きなように何度も読んで、いつも傍らにあるという状態がいいんだと思うんです」 「ただ、基本的には、ビデオのスイッチをつけるということと絵本を開いて見るということは本質的に全く違う行為だと思います。映像は、見ている見ていないに係わらず一定のスピードで送りだされる一方的な刺激ですが、絵本は、違います。 今のように子どもたちが、映像に頼れば頼るだけ、これからは現実の生活の中で、絵本を楽しむような時間が必要になってくるんじゃないですか」 これは大人も同様で、文字だけの本を読むよりも、動画サイトを見ているほうが、脳は受け身なので楽に決まっています。しかも最近は、ユーチューブよりTikTokのほうが若者にとっては主流ですから、動画であってもより短いものが好まれます。