50代後半でまだ月経があるのはよくないこと? 閉経はどんなに遅くてもいいの?【我慢しないで快適に過ごす、閉経への道 ⑧】
【教えてくれたのは】 対馬ルリ子さん 産婦人科医・医学博士。1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長。女性の生涯にわたる健康推進活動に積極的。『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が大好評。
女性が年々若くなってきている証拠。でも、子宮体がん検診は必須です
「最近、特に閉経年齢は個人差があって、全体的に高くなっているように感じます」と話すのは、OurAgeでも更年期や閉経、子宮筋腫など婦人科系のテーマでの解説が好評を得ている産婦人科専門医の八田真理子さん。 「50代後半で月経があるなんて『病気みたい』と思ってしまう人もいますが、そんなことはないですよ。 見た目の年齢は、『血管年齢』『骨年齢』に相当するといわれています。それにしても、現代の女性は若返っているよう。美魔女が増えていますよね。昭和の時代の人たちと比べたら、特に50代女性はずいぶん変わってきているなと思います。年齢×0.7ぐらいになっている感覚。だから閉経の年齢も遅めになっている気がします。 昭和の映画とかドラマとか見てても、俳優さんは年齢に比べて今よりみんな老けているじゃないですか。『これで20代?』『これでまだ30歳なの?』とかね。そこからすると今の50代女性は、昭和の30代後半ぐらいにしか見えなかったりしませんか? 今は平均寿命が延びているし、卵巣年齢もからだの年齢も若くなっているのかもしれません。ホルモンの量や卵子の数は変わらないはずですが、栄養状態がよくなり、健康に関する情報もキャッチしやすくなったことや、サプリメントや医療技術の向上も要因として考えられます。食事や睡眠、運動と、基本的な知識が徐々に皆さんに行き渡ってきて、ホルモンの巡りも血流もよくなって、若返って寿命も延びているのではないでしょうか。 とはいえ、58歳くらいの方だと『まだ生理がきてるんです』って恥ずかしそうに言うんですよ。私は『全然恥ずかしくない。それでいいのよ』って言いながら、そこで子宮内膜の状態を診てみますね。閉経年齢が遅い方は、子宮体がんのリスクが上がる傾向にあるので、子宮内膜の検査を必ず行う必要があるんです」 《更年期世代は、子宮頸がんだけでなく体がんにも要注意!》 「今、子宮体がんが増えていて、子宮体がんの罹患数が子宮頸がんを追い越して、子宮がんの半分くらいになっています。要するに、子宮内膜が厚いままになると体がんのリスク上がるわけです。 普通に月経があるということは、月経のたびに内膜がちゃんと剥がれて薄くなるわけだから、それほど問題にはなりません。 それが、更年期に入り閉経に向かって月経不順になってくると、子宮内膜はきちんと剥がれず厚みが増します。子宮内膜が厚くなり(増殖し)、異型細胞に変化し、そこに子宮体がんが発生するのです。特に、閉経後に子宮内膜が5mmを超えている場合には、私は子宮体がん検査をするようにします。 閉経間近で、薬以外で内膜が厚くならない方法はありますかって聞かれるんですが、これはもう生活習慣かな。食事は添加物や、トレーサビリティがちゃんとしていないものを避けて、和食中心にして、あとは運動することかな。そして太りすぎの肥満にならないこと! 肥満は、脂肪細胞から悪玉エストロゲンが出るので、体がんのリスクが上がるんです。 すごく脅かしてしまいましたが、不正出血していなければ子宮体がんはまず心配ないですよ。体がんは必ず出血します。久しぶりの月経みたいな感じでね。50代後半から60代あたりで、不正出血があったら絶対に受診してほしい。すぐに受診してもし仮に体がんが見つかっても、早期のことが多く、予後はそれほど悪くはありません。 一方、子宮頸がんは不正出血で見つかったら、浸潤がんになっているケースも多いのです。だから、自治体や職場の検診事業に入っているわけですね。とにかく、不正出血があったら、絶対受診してほしいですね! まずは超音波で内膜の厚さを診て、子宮内膜の細胞診や組織診の検査をしていきます。 でも、どこから出血しているのか、受診して初めてわかることもあります。子宮からの不正出血かと思ったら、萎縮性腟炎で腟粘膜から出血していることもあるし、久しぶりにセックスしたとか、急にウォーキングとかマラソンとかを頑張った、バス旅行で歩き回りましたとか…。そういうことで外陰部が擦れて出血していたなんてこともあるんですよ。 とにかく閉経時期の不正出血を見くびらないでくださいね」
【教えてくれたのは】 八田真理子さん 産婦人科専門医。幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「 聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。 イラスト/Shutterstock 取材・原文/蓮見則子