「レバノンを焼き払え」ゴラン高原へのロケット弾攻撃を受け、イスラエル閣僚が激怒
<ヒズボラの仕業とされるロケット弾攻撃で、サッカー場にいた10代以下の子ども12人が犠牲に。ハマスの越境攻撃の日以来、民間人で最大の犠牲を被ったイスラエルは本格開戦に踏み切るのか>
イスラエルが占領するシリア領ゴラン高原の町マジダルシャムスが7月27日、ロケット弾によるとみられる攻撃を受け、サッカー場にいた12人が死亡した。 【動画】ロケット攻撃の瞬間とサッカー場 これを受け、イスラエルのエネルギー・インフラ相のエリ・コーヘンはソーシャルメディアで発言した。「レバノンを焼き払え」 攻撃はイスラエルの北のレバノンを拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラによるものとみられているが、ヒズボラは関与を否定している。 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが昨年10月7日にイスラエルに越境攻撃を仕掛けて以降、パレスチナの擁護者を自認するヒズボラとイスラエルの間では攻撃の応酬が続いてきた。 今回の攻撃はまず27日に地元メディアが発生を伝え、その後イスラエル軍が、犠牲者の年齢は10~20歳の若者や子どもで、さらに20人がけがをしたことを明らかにした。 「レバノンを焼き払え」とコーヘンはX(旧ツイッター)に投稿した。「われわれは北方で重大な行動を取らなければならない。ヒズボラに重い代償を支払わせるのだ。遊んでいる子供たちを攻撃する残酷なテロ組織だ」 コーヘンはこうも述べた。「マジダルシャムスで殺された方々のご遺族、大切な人を失ったドルーズ派の兄弟たちにお悔やみを申し上げる」 ■イスラエル北部住民の怒り ドルーズ派はイスラム教シーア派から派生したアラブの少数派宗教だ。キリスト教を含むさまざまな宗教的伝統の影響を受けており、信者はイスラエルとレバノン、シリア、ヨルダンに暮らす。 ゴラン高原の住民の多くはドゥルーズ派だ。2019年のイスラエルのデータによれば、イスラエルとゴラン高原に暮らすドルーズ派の信者は14万人を超える。 ゴラン高原を含むイスラエル北部は、ガザ侵攻開始以降ヒズボラの攻撃にさらされ、住民はネタニヤフ政権に対する反感を募らせていたところだった。葬儀に訪れた閣僚に一部の住民が怒りをぶつけたのもそのためだ。 イスラエル軍の報道官は本誌に対し、今回の攻撃は「(昨年の)10月7日以降でイスラエルの一般市民の死者を最も多く出した攻撃」だと述べた。 イスラエル軍は「状況評価および把握している情報」に基づき、「マジダルシャムスに対するロケット弾攻撃はテロ組織ヒズボラによって実行された」としている。 ヒズボラの報道担当者は本誌に対し「マジダルシャムスへの攻撃について、『イスラエルの』一部報道機関および複数のメディアによる主張を断固、否定する」と声明で述べた。「我々は攻撃とはまったく関係がなく、この点に関するあらゆる虚偽の主張を否定する」 これに対してイスラエル軍の報道官は、「ヒズボラは全世界に嘘をついている」と非難。イスラエルはヒズボラに対して報復行動を取るとも語った。 アメリカはイスラエルに対し、戦線をこれ以上に拡大しないよう訴えている。 だが、イスラエルとヒズボラの間の関係は昨年10月以降、一気に緊張を増している。 イスラエルは10月7日のハマスの越境攻撃以降、ガザに激しい攻撃を加え、ガザ保健当局の発表によればこれまでに3万9000人以上のパレスチナ人が死亡したと伝えている。 一方、ヒズボラとイスラエルの間のロケット砲や無人機の応酬では、レバノン国内で約450人、イスラエル側では44人が死亡したとAP通信は伝えている。
ジェイソン・レモン、トム・オコナー(外交担当副編集長)