元中日のチェンが示すメジャーで生き残る方法
メジャーの先発投手は、クオリティスタート(6回自責3点以内)を守って100球で試合をつくることが求められる。たとえ無失点で抑えていても、球数が100球になれば5回で降板させられる。ファウルを減らすことで全体の球数を減らし、長いイニングを投げられるようにしようというのが狙いだ。 今季2戦目でメジャー通算400奪三振を達成したが、チェンは「三振をとりたいイメージが強すぎてはいけない」と自戒する。三振には、最低3球必要だが、初球でゴロやフライに打ち取れば、球数をセーブできる。4シームの直球を軸とした上で、直球に似た軌道で急にスッと減速する新チェンジアップを“抱き合わせ”にすれば、より省エネピッチに近づく。ヤンキースの田中将大も右肘の負担を減らす意味で、省エネピッチにつながるスタイルチェンジに挑戦しているが、球数制限を受けながら、年間のローテーションを守るために彼らが目指す場所は、そこなのだろう。 チェンにとってみれば、昨年136奪三振中104個を奪いながら、23本の本塁打被弾のうち20本を打たれた右打者対策としても、新チェンジアップが武器になるはずだ。 「今のピッチングをキープするだけではいけない。まだまだ足りない部分がたくさんあるので、どんどん、自分自身をレベルアップさせたい気持ちが強い。今、自分ができることをしっかりやること。それが大事だと思っている」 ちなみに、このチェンジアップ改良に尽力したのは、今季からアドバイザーとしてチームに帯同しているラモン・マルチネスコーチだ。サイヤング賞投手の弟・ペドロは有名だが、兄ラモンも野茂英雄投手がドジャーズに入団した当時のエースで、ノーヒットノーランを含め、メジャー通算135勝。90年には20勝した。当時のドジャーズ投手陣を指導したウォーレス投手コーチの推薦もあって今季からオ軍に参入。現役時代に3本指のチェンジアップを投げていた同コーチは「最近、彼のチェンジアップの球速が上がっているのは、いい兆候。きっとピッチングを助ける球になるだろう」と精度の向上に目を細めている。 3年契約が満了した昨オフ、チームが年俸475万ドル(約5億7000万円)でオプションを更新。オフにはFAを迎える。新チェンジアップを搭載したチェンが、契約最終年となるメジャー4年目でさらなる飛躍を狙っている。