米金利オプション市場、共和党の大統領・議会選「完勝」を想定
Gertrude Chavez-Dreyfuss [ニューヨーク 29日 ロイター] - 11月5日の米大統領選が迫る中で、米金利オプション市場の投資家は、金利が高止まりする局面で収益が得られるポジションを構築しつつある。そこからは、野党共和党が大統領の椅子と議会上下両院の多数派を握る「スウィープ(完全勝利)」を織り込んでいる様子がうかがえる。 共和党のスウィープが実現すれば、輸入関税が引き上げられ、結果としてインフレを招いくため長期債利回りを中心に金利が上昇すると予想される。膨大な財政赤字の穴埋めで国債発行が増加され、長期債利回りが押し上げられる面もあるだろう。 そうした事態に備え、投資家が購入を進めているのは「ペイヤースワップション(固定金利払い・変動金利受けのスワップを買う権利)」だ。 バークレイズの債券戦略マネジングディレクター、アムルート・ナシカー氏は「金利オプション市場は共和党のスウィープ確率が高まっているとの想定で動いている」と指摘。金利全般が上向き、長期債利回りが上昇することを見越した値動きだと説明した。 逆に民主党が選挙で勝てば、企業や富裕層への課税が強化されて経済成長が圧迫され、ディスインフレが発生して米連邦準備理事会(FRB)の利下げがより大幅になり、金利は短期ゾーン主導で低下する公算が大きくなる。 ペイヤースワップションの取引が目立っているのは期間5-30年のスワップ金利だ。価格の指標となる予想変動率のコストが数週間前、予測市場「ポリマーケット」で共和党候補トランプ前大統領の勝率が高まるとともに跳ね上がった。 期間30年のスワップ金利に関する1カ月物アットザマネー・オプション予想変動率は21日に31.06ベーシスポイント(bp)と年初来の最高水準に達した。 ナシカー氏は「長期債は歴史的に財政政策の影響を受けやすい。国債発行の増加が見込まれれば、長期債(利回り)が押し上げられるのが一般的だからだ」と説明する。 期間5─10年のスワップ金利でも、1カ月物オプションの予想変動率が上昇。BofAセキュリティーズのシニア金利ストラテジスト、ブルーノ・ブレジナ氏は「2020年以前の選挙サイクルで見られたよりもずっと上昇幅が大きい」と語った。 長期スワップ金利自体も、長期国債利回り上昇に伴って大きく上がるとの見方が広がっている。 ブレジナ氏は「債券にとって最悪シナリオは(共和党の)スウィープで、投資家は今積極的にヘッジしようとしている」と指摘した。 また米国債の予想変動率を示す「MOVE指数」からは、選挙直後の11月6日または7日に国債利回りが18bp前後も上下どちらかに大きく振れる展開に投資家が備えていることが読み取れる。 MOVE指数生みの親でシンプリファイ・アセット・マネジメントのマネジングパートナー、ハーレー・バスマン氏によると、オプション価格が選挙後に想定しているのは米国債利回りの急変動で、予定が分かっているイベントの振れ幅としては1991年の湾岸戦争以降で最大になると予測している。