“白毛一族”ハヤヤッコが3度目の重賞制覇 “薔薇一族”の秋華賞馬と共通点ある血統背景
【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】 ◆血統で振り返るアルゼンチン共和国杯 【写真】ハヤヤッコのこれまでの軌跡 【Pick Up】ハヤヤッコ:1着 3歳時のレパードS、6歳時の函館記念に次ぐ3つめの重賞制覇です。芝とダート双方の重賞を勝つ馬は、たいてい芝→ダートの順ですが、その逆は例が少なく、エルコンドルパサー、アグネスデジタルなど数えるほど。ハヤヤッコがまずダートで頭角を現したのは、パワー型のシラユキヒメ牝系に属していることが大きいと思われます。 ハヤヤッコの母マシュマロはダート2勝馬。その全姉ユキチャン(アマンテビアンコの母、メイケイエールの2代母)は関東オークスなど3つのダート重賞を勝ちました。また、その半妹ブチコ(ソダシ、ママコチャの母)はダートで4勝を挙げています。 シラユキヒメを始祖とするこの白毛ファミリーは、アメリカ由来だけに根がダート向きで、総じてパワーに恵まれています。芝向きの種牡馬を配されて代を重ね、徐々に芝適性を獲得しました。 ハヤヤッコは「キングカメハメハ×クロフネ×サンデーサイレンス」。これは秋華賞を勝ったスタニングローズと同じで、両者は8分の7同血です。スタニングローズは“薔薇一族”と呼ばれる芝向きのローザネイ牝系に属しているので完全に芝向きですが、ハヤヤッコはパワー型のシラユキヒメ牝系に属しているため、タフでダート適性があり芝の道悪も得意です。両者の適性を分けているものはそれぞれの牝系の性質です。 ◆血統で振り返る京王杯2歳S 【Pick Up】パンジャタワー:1着 今年産駒がデビューした新種牡馬はレベルが高く、11月第1週終了時点で、JRA2歳種牡馬ランキング(賞金順)の上位10頭のなかに5頭がランクインしています。 4位サートゥルナーリア、5位ナダル、6位アドマイヤマーズが三つ巴の激戦を繰り広げており、それを7位タワーオブロンドン、10位モズアスコットが追いかける展開です。 パンジャタワーの父タワーオブロンドンは、新種牡馬のなかでJRA重賞勝ち第一号となりました。ミスタープロスペクター系のレイヴンズパスを父に持つ持込馬(外国で種付けされて日本で生まれた馬)で、4代母マーガレセンにさかのぼるファミリーは世界屈指の名牝系です。現役時代にスプリンターズSを制覇したほか、セントウルSと京王杯スプリングCでコースレコードを樹立。サンデーサイレンスともキングカメハメハとも無縁なので、種牡馬としてはほぼどんな繁殖牝馬とも交配できるメリットがあります。 母クラークスデールは不出走馬ですが、ダービー馬ロジユニヴァースの4分の3妹(母が同じで父同士が親仔)で、マキャヴェリアンを3×3で持つというユニークな配合構成です。マキャヴェリアンはきわめて影響力の強い超良血馬で、ストリートクライ、ハルーワスウィート、ホワイトウォーターアフェア、ソニンクなどの父となっただけでなく、シャマーダル、ダークエンジェル、ゾファニーといった海外の名種牡馬の母の父でもあります。同じく“マキャヴェリアン3×3”を持つ馬には、仏二冠を制して種牡馬としても大成功しているロペデヴェガがいます。 タワーオブロンドン産駒は、芝では現時点で1200~1400mのレンジでしか勝ったことがありません。距離延長に対応することができるかどうかが今後の課題でしょう。