【特集】行く先々で“監視”“尾行”される取材班…中国当局が警戒する“不都合な報道” 海を撮影するだけで拘束も!?「不動産不況」「史上最悪の就職難」が加速する現地の“今”を現地特派員が解説
160kmも同じ車が…取材に付きまとう中国当局による“尾行”・“監視” 緊迫の一部始終
渡辺支局長ら取材班は、中国内陸部の陝西(せんせい)省で不動産不況の影響を取材した際、“尾行”や“監視”を受けたといいます。取材中は、複数の男性がこちらの様子を伺っていて、車に乗って前を通ると非常に警戒した様子で、緊張感を覚えたということです。
物々しい雰囲気の中、現場を後にすると、黒と白の2台の車が追ってきました。黒い車は、現場を離れたときに取材班が見た車と同じでした。取材班の車はしばらく走り続けて交差点を曲がり、黒い車は通り過ぎたかと思いきや、一旦停車した後バックし、また追ってきました。黒い車は一向に取材班の車から離れる様子はなかったといいます。
Q.その後、大丈夫でしたか? (渡辺支局長) 「尾行されるだけで、何か止められるといったことはなかったです。しかし、私たちが取材を終えてから帰りの空港まで160kmほどあったのですが、その間ずっと尾行が続いていました」 Q.他にも、取材中に妨害されたことはありますか? (渡辺支局長) 「2023年10月、李克強(りこっきょう)前首相が亡くなられた時に彼の故郷へ取材に行ったのですが、5~6人の地元住民に囲まれて『どこから来た?』『ここで何をしているんだ?』と追及を受け、その場所から立ち去らざるを得なくなったということがありました」 Q.なぜ、そういった妨害が行われたのでしょうか? (渡辺支局長) 「李克強前首相は、習近平国家主席との方向性の違いから不遇にも政権を去ったという見方もあったので、追悼の動きが政党批判に繋がらないかと警戒されたものと思われます」
渡辺支局長のような中国特派員の間では、例えばホテルのチェックインや飛行機等での移動など、「情報は全て当局が把握していると思って行動しろ」と受け継がれているといいます。また「不都合な情報は削除されてしまうので、その場ですぐ保存するように」といわれているということです。さらに、軍事設備が写りこむ可能性があるため、海を撮影するだけで拘束される恐れもあります。 Q.取材中の監視や尾行は、よくあることなのでしょうか? (渡辺支局長) 「そうですね。今に始まったことではないのですが、景気の不透明さ・経済の低迷を受けて、中国政府は国民の不満が爆発するのを何とか抑えようと警戒しているように感じます。不動産不況の取材に行った際に尾行されたというのは、不動産開発というのは地元政府と深い繋がりがある話ですので、『地元政府にとって不都合な報道は許されない』という姿勢の表れだと思います。一方で、私たちのインタビューに答えてくれる人もいて、非常に貴重な行為ですし、そういった声を世界に届けていかないといけないと思っています。中国社会は、スマホ決済や顔認証など非常に進んだ技術を持っていて、裏を返せば、いくらでも私たちの行動履歴や個人情報が辿れてしまうということです。取材に応じてくれた人たちを守るためにも、どんなリスクが身近にあるかというのは念頭に置いて、取材を行っていきます」 (「かんさい情報ネットten.」2023年12月29日放送)
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