浜松親族3人殺害、男に無期懲役求刑 検察「責任能力ある」、弁護側は無罪主張 地裁支部公判
浜松市中央区佐鳴台の自宅で親族3人を殺害したとして殺人罪に問われた無職の男(25)の裁判員裁判論告求刑公判が4日、静岡地裁浜松支部(来司直美裁判長)であり、検察側は無期懲役を求刑した。弁護側は別人格による犯行として無罪を求め、結審した。判決は2025年1月15日に言い渡される。 11月中旬の中間論告・弁論は男が実行したかどうかの犯人性と殺意の有無について検察、弁護側が意見を述べたため、今回は責任能力に関する主張を双方が展開した。 検察側は、凶器の準備や血がついた服を洗濯した証拠隠滅行為を「計画性があり臨機応変に立ち回った」とし、言動に一貫性があるため「完全責任能力があるのは明らか」と指摘。殺害の瞬間など、都合のいい場面ばかりで別人格に交代したとする被告の供述は変遷もあり不自然とした。被害結果は極めて重大としつつも、幼少期から虐待を受けた背景から「死刑を選ぶ事案ではない」と述べた。 弁護側は、残忍な行為に及んだ被告の姿は平素とはかけ離れ、事件前後の言動に一貫性がないため「『ボウイ』という別人格が実行した」と主張。供述の変遷についても「別人格があるなら当然のこと」と反論した。「被告自身には行動制御能力がなかったか、少なくとも著しく低下していた」として責任能力がないか、限定的とした。 専門医2人の精神鑑定については、別人格の存在を巡って対立。検察側は「あくまで一個の人間」との見方を採用し、弁護側証人の医師の認識を「SF、オカルト的で現在の精神医学界の主流に反する」と切り捨てた。弁護側は「ボウイによる犯行とみるのが整合的」との意見を取り入れ、検察側証人の医師の鑑定を「前提条件に問題があり、公正さを欠くため信用できない」とした。 起訴状などによると、22年3月8日夜、自宅で祖父=当時(79)=と祖母=同(76)=、兄=同(26)=の頭をハンマーで殴るなどして殺害したとされる。
静岡新聞社