家族の“後始末”を代行する「レンタル家族」の実態とは?「気持ち的に楽よ。ちゃんと始末してもらえるから」
親族に代わって高齢者の生前から死後までの世話を請け負う終活専門団体がある。突如として“後始末”を迫られた親族からの求めで需要拡大する“孤立ビジネス”に、ノンフィクションライター・菅野久美子氏が迫る。本稿は、菅野久美子『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 疎遠な親族の「後始末」を 他人に代行してほしい 孤立という病が社会をじわじわと侵食しつつある。特殊清掃が、その最後尾にいるとしたら、まさに、その最前列にいるのが、高齢者のサポートを行う終活専門団体だ。 遠藤英樹(51歳)は、自らを“レンタル家族”と称し、家族の代わりとなって高齢者を手助けしている。 介護施設選びから葬儀まで、トータルで対価をもらうが、実際は生前から疎遠で、血縁というだけでお荷物と考えられている家族の“後始末”を担うことが多い。 まさに現代の姥捨て山という現象が起きているのだ。 「孤独死とか、孤立している人たちが、自分から助けてということは本当にまれなんです。一番多いのは、そういう人たちを抱えている、家族や兄弟からの相談ですね。 疎遠になっている親戚っていませんか?と問いかけてみるほうが、孤独死はなくなると思うんです。 実際は周りの家族の困りごとのほうが多いんですよ。自分が孤独だから、終活の準備をしたいという人はほとんどいません。周りから疎遠であればあるほど、自分から終活はしないんです。 しかし、いざ、介護や葬儀などが絡むとそういうわけにはいかない。私たちは、家族から密接には接触したくないと思われている人たちの受け皿、まさに“レンタル家族”になってるんですよ」
遠藤がサポートしているのは介護施設にいる兄をもつ、小林良子(仮名・61歳)だ。この日は、川崎駅前の喫茶店で待ち合わせた。 良子は、20年以上会っていない兄から、突然、駅前で倒れたという連絡があって、慌てふためいたという。 遠藤は、特に気を遣う様子もなく、単刀直入に切り出す。 「それでお兄さんが亡くなった後のことなんですけど、小林さんの希望は散骨ということですよね」 「そうねぇ。骨が残っても困るから、海洋散骨がいいんじゃないかと思って」 「散骨は業者がやってくれるんですよ。場所はどこにしましょうか」 「東京湾ですかね」 もう一度書いておくが、これは死後の話ではない。良子の兄は一度倒れて初期の認知症ではあるものの、病院から介護施設に移ると驚異的な回復力を見せて、ピンピンして生活している。 ● 20年ぶりの再会が悪夢の始まり 血縁者なら世話をすべきなのか? しかし、妹の良子と遠藤はそんなことなどお構いなしに納骨の話まで、ざっくばらんに打ち合わせを進めている。その表情には安堵の笑みさえ浮かんでいる。 話はどんどん進んでいき、結局兄の死後は、管理のわずらわしくない海洋散骨を選択することになった。