「食のクワイエットラグジュアリー」として海外の高級レストランで人気の「日本の食材」─キャビアやフォアグラに飽きた中国の食通は何を求める?
2024年のファッション界でよく聞かれるワードのひとつが、「クワイエットラグジュアリー」だ。高級ブランドにありがちなロゴや派手さを排し、あくまで控えめに、それでいて上質なアイテムを身に纏うことが、真の洗練さにつながるという。 【動画】「野菜のキャビア」こと「涙豆(ギサンテ・ラグリマ)」ってこんな豆 中国紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」は、こうしたトレンドが食の分野にも及んでいると書く。なかでも日本人が家庭で食べている3つの食材が、香港の高級レストラン界隈で人気だとして、地元の高級食材とともに紹介している。 高級レストランといえば、キャビア、アワビ、ウニ、和牛にフォアグラなんかが思い浮かぶかもしれない。 だが、普通のアイスクリーム店でバニラ味やピーナッツ味が定番であるように、最近ではこうした代表的な希少食材もあまりに使われすぎて、苦笑を誘うレベルとなってしまったようだ。シュウマイから羊の骨つきすね肉まで、あらゆる料理がスライスしたトリュフや金箔で飾られ、見た目で「お会計は恐ろしいことになりますよ」と言ってきたりもする。 しかし、ファッションにおいて主役となるアイテムと「クワイエットラグジュアリー(=控えめな高級品)」の区別があるように、超高級食材においても同様の区別があるのだ。
偶然から生まれた日本の野菜
日本人の繊細な文化的洗練・品位はさまざまな分野で発揮されているが、彼らは高級作物においてクワイエットラグジュアリーを作り出すことにも長けている。 たとえば、秋と冬を旬とする日本のフルーツトマト。小さな実に濃厚な甘みと旨みが凝縮していることで知られるこの品種は、1970年、通常のコースを外れ、四国に突如として上陸した台風のおかげで生まれたとされている。 伝えられているところによれば、台風が過ぎたあと、高知市内の堤防が決壊し、あるトマト農園が塩水に浸されてしまった。例年ほど水分を吸収できなかったトマトの実は小さくなって凝縮し、通常よりもずっと甘くなったのだという。 これは瞬く間にヒット商品となり、その自然な甘さから、日本ではフルーツトマトの生食が好まれるようになった。事実、日本のフルーツトマトは一般的なトマトの2倍の糖度を誇る。 現在、フルーツトマトは瀬戸内地域の野外農園に加え、全国各地にある最先端の温室で栽培されている。農家は栽培プロセスの徹底的な管理と、土のブレンド、剪定の方法、水ストレスに関して実験的な改良もおこなっている。 品種にもよるが、「アメーラ」「徳谷トマト」「太陽のめぐみ」といったフルーツトマトの値段は、普通にスーパーで売っているトマトの3~6倍にもなる。
Gavin Yeung