「先にやることがあるのでは?」…政府・与党が検討を始めた「子育て世帯」の「生命保険料控除の拡充」にブーイング殺到!その問題点とは
保険以外のニーズが高まっている?
さらに、特筆すべきは、「今後増やしたい生活保障準備項目」について「世帯主の老後の生活資金の準備」が前回調査(2018年)から5.3ポイント増加し32.4%に達したことです。 詳しくは後述しますが、近年、保険の世界では、貯蓄性保険の利率が著しく低くなっていることもあり、「保険」と「貯蓄」を分けるべきという考え方が有力になってきています。生命保険の本来の役割と異なる「老後の生活資金の準備」のニーズが高まっているということです。 利率が低い貯蓄型保険に加入して保険料の一部について生命保険料控除を受けるより、掛金全額控除を受けられる「iDeCO」や、運用益が非課税となる「NISA」の制度を利用して投資したほうが効率がよくなっているのです。 そんななかで「生命保険料控除の拡充」を行っても、効果は限られているかもしれません。
金融庁のいい分は?
金融庁のいい分を見てみましょう。金融庁の税制改正要望においては、先に紹介した生命保険文化センター「令和4年(2022年)度 生活保障に関する調査」のデータ([図表]参照)を基に、「国民が加入している死亡保険金額は、遺族の生活資金の備えとして(国民が)必要と考える死亡保険金額に比べて6割程度に留まっている」と指摘しています。 「生命保険料控除の拡充」によって、保険料の負担を軽減し、民間の保険、特に一般生命保険料控除の対象となる生命保険への加入を促したいという意図がみてとれます。 しかし、上記データは注意してみる必要があります。つまり、保険に加入する人が「主観」で必要と考える死亡保険金額と、実際に必要な死亡保険金額とは異なるということに留意しなければありません。 すなわち、生命保険で死亡保険金を適切に設定するには、まず、将来いくらお金が必要なのかを自身と家族のライフプランを基に算出する必要があります。そのうえで、万一自分が死亡した場合に、遺族年金等の公的保障をいくら受け取れるか、その時点での貯蓄でどのくらい賄えそうか、といったことを踏まえたうえで、過不足のない保険金額を算出する必要があるのです。 しかし、金融庁が紹介している上記調査結果はあくまでも対象者の「主観」に着目したものであり、必ずしも、客観的な根拠に裏付けられた金額が導き出されているとはいえません。その点を割り引いて考える必要があるということです。