「冷静に考えるとエグい…」『鋼の錬金術師』禁忌を犯した者が支払った「ヤバすぎる代償」
■内臓のいくつかを失くしたイズミ・カーティス
次は、エドたちの師匠であるイズミ・カーティスの行った人体錬成を見ていこう。イズミは結婚後妊娠をしたが、流産をしてしまい子どもが産めない体になってしまった。 その過去をずっと悔いていたイズミは、人体錬成でわが子を蘇らせようとしてしまう……。結果として彼女は、内臓のいくつかを代償として持っていかれることになり、虚弱体質へと変わってしまった。そのため、よく吐血をする場面が見られ、長い時間戦っていられないのが分かる。 そんな状態になった時、イズミはエルリック兄弟と出会い、錬金術や体術を徹底的に叩き込んだ。イズミからすると、ふたりは自分の子どものような存在だったのだ。エドたちもそんなイズミのことを尊敬していて、母親のように慕っている。 しかし、イズミが自身の経験から「人を生き返らせようなんて事はしてはいけない」と警告したにもかかわらず、エドたちはそれを無視してしまった。最悪の結果を止める事ができなかったのだ。 エドたちがイズミに自分たちの過ちを伝えたとき、イズミは自分と同じ道をたどったふたりを強く責められなかった。愛する存在を失ったことで絶望し、会いたい気持ちを抑えられないのが理解できたからだ。やさしくエドとアルを抱きしめたイズミと、子どものように「ごめんなさい」を繰り返すふたりの姿には、思わず胸が締め付けられてしまった……。
■視力を奪われてしまったロイ・マスタング
最後は作中でも多くの活躍を見せているロイ・マスタングだ。マスタングは、先に紹介したふたりとは違う状況で人体錬成を行う。いや……無理やりやらされたといったほうが正しい。 本作のラスボスである「お父様」は巨大錬成陣の発動を計画していたのだが、そのために必要とされる「人柱」候補に挙がったひとりがマスタングだった。人柱になるための条件は、真理の扉を開けた錬金術師でなければならない。 人体錬成を行うと真理の扉を開けることになるので、すでに経験しているエド、アル、イズミは人柱となった。そしてマスタングも狙われ、強制的に人体錬成をさせられる羽目になる……。 錬成が終わった後、一見したところマスタングの肉体に異変は見られなかった。しかし、「まっ暗で何も見えん ここはどこだ?明かりは?」と話し、すぐに目が見えなくなっていることがわかる。代償として視力を奪われてしまったのだ。 マスタングは望んでいない人体錬成によって目が見えなくなってしまったので、可哀想としかいいようがない。その後の戦いもホークアイの補助なしではできなかった。 錬成陣なしで錬金術を使えるようになったのは便利かもしれないが、それ以上に代償が大きすぎる……。 錬金術を極めていくと「ひょっとしたら人も生き返らせることができるかも」という誘惑もあるのかもしれない。しかし、それができてしまうと生死の概念が覆され、世界の理が大きくねじ曲がってしまう。 人が人であるために……禁忌と呼ばれている理由もそこにあるのではないだろうか。
大山元