新型スイフトは先代よりもすべてが「ひとクラス上」スズキの良心が凝縮されたようなコンパクトカーだ
新開発3気筒エンジン+副変速機なしのCVT
エンジン形式:直列3気筒DOHC エンジン型式:Z12E型 排気量:1197cc ボア×ストローク:74.0mm×92.8mm 圧縮比:13.0 最高出力:82ps(60kW)/5700rpm 最大トルク:108Nm/4500rpm モーター:WA06D型直流同期モーター 最高出力2.3kW(3.1ps)/1100rpm 最大トルク60Nm/100rpm エンジンは新開発である。リッターで表記すると1.2Lで先代と変わりはないが、4気筒が3気筒になった。正確には1242ccだった排気量が1197ccになり、45cc小さくなっている。最高出力は67kW(91ps)から60kW(82ps)、最大トルクは118Nmから108Nmとなり、どちらも落ちている。 カタログに載っているこの数値だけで判断すれば「性能は落ちた」ことになるが、あくまで全開全負荷で性能を計測した場合の話だ。低速域のトルクはむしろ「先代よりアップさせている」という。試乗した実感でも不足はない。というより、頼もしいエンジンだ。 新設計したエンジンを適用したのは、燃費のためである。4気筒から3気筒に変えたのは、効率のためだ。ボア×ストロークは74.0×92.8mmで、ストローク/ボア比は1.25である。乱暴にいえば、4気筒→3気筒化で機械損失の低減を、ストローク/ボア比を大きくしたことで冷却損失の低減を図る狙い。吸気ポートはストレート化しつつ寝かせてタンブル(縦渦)を強くし、混合気を良く混ぜて燃焼改善を図る。 EGR(排ガス再還流)は率を高めて部分負荷でのポンピングロスを低減。気筒間でばらつかないよう、トーナメント方式の分配通路を設けた。「孔径を広げたり、狭くしたり、実機をベンチで回して細かなチューニングを繰り返しました」と開発担当者は話す。言ってみれば地道な技術とチューニングの組み合わせだが、コストのかかる飛び道具に手を出さず(リーズナブルな価格で提供したいので)、ドライバビリティを損なわないよう注意しながら、徹底的に効率を追求したエンジンだ。 先代スイフトのCVTは副変速機付きだったが(ジヤトコ製)、新型は副変速機を持たないコンベンショナルなCVT(アイシン製)に置き換えた。1.9kg軽くなったのは、変速機構がなくなった分が大きい。副変速機を持たないことでレシオカバレッジ(変速比幅)の点で不利になるが、そこはエンジンとCVTの効率アップでカバーしたという。 変速時のクラッチ切り替えにともなうトルク変化やレスポンス遅れがなくなるのは制御面のメリットだ。エンジンとの適合は上手にできており、気になる点は一切なかった。低車速時に高回転まで回したときのノイズも気になるほどではない。