<挑め!心一つに・’24センバツ田辺>軌跡/中 智弁降し膨らむ期待 近畿大会は1回戦で惜敗 /和歌山
昨秋の県2次予選準決勝。近畿地区大会の出場権をかけ、智弁和歌山との大一番に臨んだ。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち エースの寺西邦右(ほうすけ)(2年)は1年夏の選手権和歌山大会2回戦で、智弁和歌山を相手に先発デビューをした経験があった。当時背番号は20。田中格監督(51)に起用した理由を尋ねると「実力があったからです」と即答する。「2イニングだけ」という条件付きだったが、その間は0点に抑え、堂々の3奪三振。試合は負けたが、寺西にとってかけがえのない一戦となった。 寺西は「1年夏を思い出し、自信があった」と振り返る。チームも秋以降に高野山や市和歌山を破ったことで、「互角に戦えるんじゃないか」という思いが芽生えていた。 県1次予選から一人で投げ抜き、試合ごとに力をつけた寺西がマウンドに立った。五回に先制を許したが、2点を追う七回に満塁の好機で主将の山本結翔(ゆいと)(2年)が四球を選びまず1点。続く4番の山本陣世(同)が左越えの逆転満塁本塁打を放ち試合を決めた。山本陣は2試合連続のホームランで、球場が歓喜に包まれた。試合終了直後、「言葉が出ないです。智弁和歌山とは何度も戦っていますが、一度も勝ったことなかったので……」と田中監督は快進撃を続ける選手たちの姿に感嘆した。 ただ、強豪2校を相次いで降したものの、翌日の決勝では耐久に3―5で敗れた。連投の寺西に疲労がたまり、山本陣、太田爽心(そうしん)(1年)との継投で挑んだが届かなかった。それでも、猛攻はとどまることなく、九回に1点を返して粘りを見せ、安打数では耐久を上回った。敗れたものの、近畿地区大会の切符を手にしていたチーム。「このままの流れを保てば、甲子園に行けるかもしれない」と胸を膨らませていた。 52年ぶりに出場した近畿地区大会は、初戦で京都国際と対戦した。初回に山本陣の適時打で先制し、八回には山本結の適時打で逆転。しかし、その直後に再び1点を返された。1点の重みが増す、息をのむ投手戦だった。2―2から延長十回のタイブレークまで持ち込んだが、惜敗した。 市和歌山、智弁和歌山の強豪2校を打ち破り、京都国際の小牧憲継監督が「そんなに簡単に勝たせてもらえる相手ではないと思っていました」と語るほど、他校からも実力は認められていた。期待が高まっていただけに、チームには重苦しい雰囲気が漂った。「センバツ出場が遠のいた」。誰もがそう考えていた。【安西李姫】