WECチームに家族愛が足らん!? [ハースF1]と提携して[トヨタ]のモリゾウさんはなにをするのか?
■「自己鍛錬」ではなく「新しい風」が必要
豊田氏に以前「トヨタにとって脅威なのは、『従業員がトヨタは大丈夫だ』と思うこと」だと聞いたことがある。 トヨタの強みは危機感の共有だ。その本質は「危機感は人から与えられるモノではなく、自分が持つことが重要であり理想」と言うことだが、WECチームはそこが欠けているような気がする。 その危機感の一つは「なぜ、モリゾウ軸になれない?」だと思うが、残念ながら人から与えられた課題である。それを自分事にできないことが問題だ。 確かにWECチームは2012年から参戦を行ない、"独自"でマシン開発を行なってきた。ハイブリッド技術の構築のために、トヨタの最先端の技術がここで鍛えられてきたのも事実である。 その努力は、トヨタ念願のル・マン制覇、シリーズチャンピオンを何度も獲得することで証明されている。今年は苦しい戦いだが最強チームの1つであることは間違いないだろう。 ただ、最強であるがゆえに「自己鍛錬」だけでは限界がある。それはチーム運営も含めてだ。それを変えるには「新しい風」が必要だ。
■大きなトヨタから小さなトヨタへ
これまでトヨタへの「新しい風」が様々な改革をしてきた実例がある。 2007年に生まれた「小さなトヨタ」……"元祖"GRの活動が「大きなトヨタ」を変えたことはいうまでもない。WRC復帰も、トヨタ自前ではなくTMレーシングとコラボレーションだったし、さらにニュル24時間から繋がるS耐のカーボンニュートラルの挑戦も、ROOKIE Racing(豊田章男氏のプライベートチーム)とのコラボレーションだった。 これらはトヨタとは異なる「小さい組織」「プロフェッショナル/即断即決ができる組織」と同じ目的・考えを共感しながら挑戦を行なっており、様々なひらめきやイノベーションが生まれているのも、紛れもない事実である。 ただ、WECチームは他の参戦カテゴリーと異なりコラボレーションを行なう相手が限られる。そう、F1しかないのだ。 そういう意味では、筆者は今回のHaasとTGR提携がもっとも活きる部分は、実はWECチームじゃないかなと思っている。 高橋プレジデントに聞くと、「今回の提携内容のメインはドライバーですが、メカニック/エンジニアに関しては、すべてではありませんがそのような考え方もあるでしょうね。そもそもWECチームに関しては会長から多くの"宿題"も貰っていますし」と答えてくれた。 筆者は今回の提携は、WECチームがモリゾウ軸になるための大きなチャンスだと考えている。TGRのすべてのモータースポーツ活動が「ワンチーム」で「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」に色濃く貢献できる体制なれることが理想だが、筆者は今回の提携はそのリスタートだと思っている。今後も多角度から追っていきたい。