結末は予想外だった…? 『あの花』”青春三部作”から何が変わったのか? アニメ映画『ふれる。』考察&評価レビュー
後半で明かされる「ふれる」の本当の能力
本作に話を戻すと、3人は奈南と樹里をめぐる恋愛感情によって友情が崩れ始めていく。さらに、「ふれる」の本当の能力を知り、友情はボロボロになってしまった。 実は思っていることがなんでも伝わっているのではなく、関係が悪化する火種になりうることは遮断されていたのだ。 結局「都合のいいことしか共有できていなかった」という事実は3人を失望させ、失意の中で秋は家を飛び出した。絶対の友情がみるみる崩れていくその流れは「どうしてこんなことに…」と観客が思ってしまうほど重い展開だ。 だが、突然「ふれる」の姿が見えたかと思うと3人は異空間へ飛ばされた。友情が崩壊した状況で3人をまた引き戻そうとするかのようだ。 異空間で3人が合流し、ようやく本音で語り合った。秋は友達になるために「ふれる」に頼ったことを反省した。 劇中にも何度か出てくるように、本作には「言いにくいことでも自分の口でちゃんと言わないといけない」というメッセージが込められているのだろう。 そして、3人は本音を交わす中で「ふれる」がいなくても親友になれていたことを確信した。 3人が本当の友情を確立するシーンは観客を熱い気持ちにさせてくれる。だが、本作はこれで終わりではなかった。
人ではない「ふれる」との絆から見えること
現実世界では「ふれる」が暴走を始め、町中に糸を放出していたのだ。その糸は秋にしか見えず、糸にふれると、思っていることがすべて漏れてしまう。 そのため、町中はパニックになっていた。 「どうしてこんなことに…」と思いながらも秋は気づく。「ふれる」の気持ちだ。もう「ふれる」なしでも大丈夫。そんな3人の思いに「ふれる」は孤独を感じた。それに気づいた秋は「これからも一緒にいよう」と手を差し伸べる。 3人の友情が壊れていく展開のインパクトのあまり、「ふれる」も感情を持った動物ということを観客は忘れるだろう。 だが、クライマックスでうるうるときらめく「ふれる」の目でようやく気づくのだ。そんな演出がラストの感動を大きくしてくれる。 思えば、フリスビーをするシーンなどで分かるように、「ふれる」はかわいげのある小動物なのだ。しかし、その能力は偽りの絆を生み出してしまう厄介なもの。そのせいで人からは敬遠されてしまっていた。 映画冒頭で閉じ込められた「ふれる」を見つけたのが、秋だ。「ふれる」に孤独を救われた秋と同様、「ふれる」も秋によって孤独から救われ、そんな秋のことが好きだったのだろう。 秋によって暴走が止まり、秋は「ふれる」と共に新たな道へ進んでいく。諒と優太ともお別れとなるがその友情はゆるがないものとなっていた。 これで本作は終幕となるわけだが、人ではない「ふれる」との絆という予想がつかない結末だった。もちろん、「ふれる」の能力によって見えてくる、言葉で語り合うことの大切さも見どころだ。そして、「ふれる」のように言葉を直接理解できなくても、言葉に込められた思いが心を動かせるというのを見せてくれた作品だといえる。 【著者プロフィール:ガラガラ】 名探偵コナンやアニメ映画関係のブログを書いている。 【作品情報】 監督:長井龍雪 脚本:岡田磨里 キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀 出演:永瀬 廉、坂東龍汰、前田拳太郎 ©2024 FURERU PROJECT 制作:CloverWorks 製作幹事:アニプレックス・STORY inc. 配給:東宝・アニプレックス
ガラガラ