結末は予想外だった…? 『あの花』”青春三部作”から何が変わったのか? アニメ映画『ふれる。』考察&評価レビュー
アニメ映画『ふれる。』が現在公開中だ。埼玉県秩父市を舞台にした”青春三部作”を手掛けたスタッフが再結集して制作された本作は、不思議な生き物「ふれる」と暮らす青年三人の友情物語。今回は、”青春三部作”と比較することで、本作の魅力を浮き彫りにする。(文・ガラガラ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 ※本レビューでは映画のクライマックスについて言及があります。 【写真】映画の世界を堪能できる貴重な未公開カットはこちら。映画『ふれる。』劇中カット一覧
“青春三部作”とは違う新たな映画?
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011、2013)、『心が叫びたがってるんだ。』(2015)、『空の青さを知る人よ』(2019)の青春三部作を手掛けた長井龍雪(監督)×岡田麿里(脚本)×田中将賀(キャラクターデザイン・総作画監督)の3人が再集結した映画『ふれる。』が公開された。『空の青さを知る人よ』の公開が2019年からおよそ5年ぶりとなる。 この3人には「超平和バスターズ」というチーム名があり、かつての青春三部作ではその名前が原作者としてクレジットされていたが、『ふれる。』ではその名前はない。 そして、青春三部作はすべて埼玉県秩父市周辺が舞台となっており、秩父三部作とも呼ばれていたが、本作は東京都新宿区の高田馬場が舞台となっている。 となると"かつての作品とは違った新しい映画を作るんだ"といったメッセージが聞こえてきそうだ。 青春三部作には共通点があり、現実ではありえない超常現象的な設定が存在すること、友情と恋愛が交錯する展開が見られることが挙げられる。果たして、本作『ふれる。』ではいったいそのような共通点がみられるのか、それとも新しい展開が待っているのか?
不思議な生き物「ふれる」が持つ特殊能力
本作にも超常現象的な設定がある。もっとも予告映像でわかることなのだが、「ふれる」というハリネズミのような小動物の能力で3人はふれただけで心の中で思っていることがお互いに伝わる。3人というのが本作の主人公で、小野田 秋(永瀬 廉)、祖父江 諒(坂東龍汰)、井ノ原 優太(前田拳太郎)だ。 幼少時代に「ふれる」を見つけたのが秋で、秋は話すのが苦手だったが「ふれる」の能力でスムーズに思いを共有できたことで、諒、優太と親友になった。その後、20歳まで共に過ごし、生まれ育った離島から東京へ出る。そして、1つの家に3人と「ふれる」で暮らし始めたところから物語が動きだす。 まず、男3人で1つの家に住むことからも友情の強さが伺える。いくら友達でも住む場所まで同じというのはなかなかできないはずだ。 そして、「ふれる」の能力はふれた際に思ったことを強制的に伝えてしまう。当然ながら、人には隠したいこともあるはずだが、それでも3人が親友であり続けたというのは友情の頑強さをまざまざと示しているだろう。 「俺たちは思っていることを包み隠さず言い合える仲だ!」といくら口で言っても頭の中を覗けるわけではないから本心はどこまでいってもわからない。 だが、「ふれる」の能力がその裏付けとなっているわけだ。