片平なぎさが語る「大映ドラマ」「2時間ドラマ」秘話「当時は石を投げられたことも」
もう一つ『小京都ミステリー』で忘れられないのが、ゲストが菅原文太さんで、松山で撮影した回があったんですけど、みんなで夜ご飯を食べに行くことになったので、文太さんとお店で待ち合わせをしたんですね。船越英一郎さんと私の撮影が終わったのでお店に向かおうとしていたら、夜空にお饅頭みたいな大きな雲がポカーンと浮かんでいて。みんなで『不思議な雲ね』と言いながら見ていたら、その雲に無数の光が入っていくんですよ。何百という光がその雲に吸い込まれていくんですけど、雲の先から光が出ていかないんです。みんな口々に『あれってUFO?』と(笑)。正体が知りたいのでしばらく見ていたかったんですけど、お店に待たせているのは、かの菅原文太さん!“これはもうあきらめるしかないよね”となって、その後は走ってお店に向かいました。 あの不思議な光景も、いまだに脳裏に焼き付いていますね。2時間ドラマのロケは、皆さん街をあげて協力してくださって…本当にいい時代でした」
現場は明るくて楽しい方がいいなと思っています
“2時間ドラマの女王”と呼ばれる前の片平が悪女・真理子役を演じ、一世風靡したのが、大映ドラマ「スチュワーデス物語」(1983~84年)だ。義手にはめられた手袋を口を使ってはずすシーンが話題に。大映ドラマファンには、今もなお語り継がれる伝説に残るキャラクターだ。 「少し前までは、若い人とお仕事でご一緒にする度に『真理子、見てました』と言ってもらえたり、飛行機に乗ると、キャビンアテンダントの方が『あのドラマを見て、憧れて就職しました』と声かけてくれたりしたんですけど、ここ数年は、すっかり言われなくなりました。でも、ドラマ『罠の戦争』(2023年)に出演した時、現場に行ったら、総理大臣役だった高橋克典さんが、私に向かって手袋を取る真理子のマネをしてくださって(笑)。みんなが笑うと思ってやったみたいなんですけど、スタッフの皆さんも若いし、誰も知らなくて…気づいたのは私だけでした(笑)。 真理子は世の中的に嫌われるキャラクターでしたし、演じた時、私はまだ24歳で若かったんですよ。街を歩いていたら石を投げられたこともありましたし、喫茶店に入れば女子高生に悪口を言われて、その度に傷ついて…でも今振り返ると、“どうせ嫌われるのであれば、もっととことん振り切って演じれば良かった”とは思います。名作と言っていただけるのは本当にありがたいことなんですけど、当時はそのありがたさがわからなかった。今のこの気持ちがあれば、“あの時、もっと感謝して演じられたのにな”と後悔しています」