目黒蓮、『海のはじまり』で踏み出した大きな一歩 “心の交流”を通して描かれた夏の成長
夏(目黒蓮)の眼差しに宿った“強い意志”
夏は“自分の主張よりも基本的に相手の主張を尊重する人物”だと先に記した。しかし大切な人の死を知り、喪失を抱える人々の痛みを感じ、娘と出会ってからの彼には変化が見られるようになってきた。自己主張すべきところでは、正々堂々とするようになってきたのである。 けれどもこの変化は、とても繊細なものでなければならない。でなければ夏のキャラクターから一貫性が消えてしまう。もちろん、人格が急に変わってしまってもおかしくはない経験を彼はしている。優しいだけではこれからの人生を歩んでいくのは難しいだろう。 それでも夏は、どこまでも優しい人間なのだ。深い優しさを絶えず中心に持ちながら、未来に向かって少しずつ変化している。ときに目黒の眼差しには強い意志が感じられ、その声には揺るぎない想いが表れるようになってきた。演技巧者たちに囲まれながら着実に歩を進めるーーそんな俳優・目黒蓮の“優しい足取り”をあと少し見守りたい。
折田侑駿