なぜテレビのニュース原稿はです・ます調?バグやハックだらけの環境でどう信頼される?〝中の人〟らが議論
バグやハックが横行する環境で
水野:あらためて、今後のウェブメディアはどうなっていく、どうなっていってほしいと思いますか? 徳力:私はやっぱり「怒りのエネルギーを増幅すること」が今、儲ける手段になってしまっている、これがメディアの大きな課題だと思っていて。 でも、これはメディアだけでなく、SNSでもインフルエンサーがそうなってしまった。これは社会においてのある種のバグだと思っています。 というのも、現実社会でそういうことをする人がいたら、普通は「ダメだ」って言われるし、反省して謝るとか、もうしないということに普通はなると思うんですけど、ネットではそれが繰り返されてしまう。 匿名掲示板の時代から脈々と、日本のネットでは「ちょっと斜めに構えてポジションを取った方がカッコいい」という雰囲気があると思うんですよね。これはネットが普及した今、もう社会常識に照らして、直さないとダメじゃないかなと思っています。 私は情報発信は運転免許と同じだと思っています。自動車が普及した時、人間は移動の自由が広がって、好きなところに行けるようになりました。でもその代わり、人の命に関わる可能性があるから、その自由は免許制になって、一定のルールができました。 情報発信も、人間はすごい武器を手に入れちゃって、それこそ剣よりも強いペンが、ネット上では誰もが自由に使えて、今はルールがはっきりしていない、野放しの状態です。その結果、誹謗中傷などにより、情報発信が人の命を奪ってしまうケースも実際に起きている。 言論の自由があるから、少なくとも日本では情報発信は免許制にできないと思いますが、若年層は、インフルエンサーとして目立っている人たちのやり方が普通だと思ってしまうおそれがあります。 これって、車で例えると、暴走族を見た子どもたちが「あれになりたい」と思う状態なわけですよね。今のSNSは普通の交差点を制限速度オーバーで信号無視をして他の車にバンバンぶつかりながら曲がっていくのを「プロの技だ」ってドライバーが自慢しているようなものなんです。 そして、インフルエンサーの人も、敵を作ることによって敵の敵を味方にするというテクニックのアドバイスをしちゃう。「フォロワーを増やしたかったら誰かに突っかかって敵を作れ」みたいに。 それが「カッコいい」と誤解されたり、放置されて影響力を増し続けているのは、社会常識上おかしいと思うので、これをどうにかするというのが今後の重要なテーマだと思います。 足立:例えばテレビがもし、YouTuberと呼ばれる方々と同じような早いテンポ、カット割りでショート動画を作って同じ土俵に乗っても、その効果は短期的で、徳力さんのおっしゃるような風潮そのものは覆らないという気がするんですよね。 だから、ネットの流行と同じスタイルに乗っかるのではなくて、自分たちが大事にしているスタンスで情報発信をして注目してもらって、メディアでも中の人でも、ファンを作っていくというのがいいんじゃないかなと思います。これからはそのためのアピールも必要になっていくでしょうね。