なぜテレビのニュース原稿はです・ます調?バグやハックだらけの環境でどう信頼される?〝中の人〟らが議論
ウェブメディアが信頼されるには
水野:もう一つ紹介したい参加者からの質問が、「今後、ウェブメディアがNHKや新聞のように『ここであれば安心』といったブランド力を獲得していくことはできるのでしょうか」「またそれを目指すために何をすべきとお考えでしょうか」というものです。 足立:安心のブランド力と言っていただきましたが、まずは本当に安心してもらう、「このメディアは信頼できる」と思ってもらうことがいくつかある大事なことのうちの一つだと思います。 ただ「安心できる」ということは、ともすれば「慎重になる」「情報が遅くなる」ことにつながるかもしれません。 それをすべてのウェブメディアが目指すべきかと言うと、そうではないでしょう。ちょっと先を行くスピードを優先する媒体もあるでしょうし。じゃあ「このメディアは何を目指すのか」が今度はポイントになって、それによって取り組み方が違うとは思います。何に注力するかですよね、全部やることはできないので。 水野:マスメディアと呼ばれるものが、本当に安心のブランド力があるのかというと、そこからですよね。逆に「朝日新聞だから信用できない」という方もいらっしゃると思いますし、信頼してもらえるような取り組みを続けるのが大切なことなのだろうなと思います。 徳力:ネットメディアの場合に難しいのは、多分、今もうメディアを見る人のほとんどはYahoo!ニュースやスマートニュースのようなプラットフォーム、あるいはSNS経由で記事を見ているところなんですよね。 実は「メディアのブランド」自体がもう最初から存在しない状態になりやすい環境があるというのは考えておかなければいけないと思います。 だからこそウェブメディアはキャラが立ちにくく、ファンも作りにくいから、ページビューだけの論理に巻き込まれやすいところがあるんだと思うんですよね。 そこでのポイントは、やっぱり信頼になると信じたいです。もちろんアメリカなどを見ても、もう右派と左派が完全に分断されてしまって、言動からもトランプ氏自身が過激なYouTuberの手法に近いことをやっている。 そしてそのトランプ氏からしたら「既存メディアこそがフェイクニュースである」と訴えているみたいな。もう、信頼というものの形が変わってしまったんだと思います。 その上で、信頼を構築するためのコストと収入がペイしないというのは、今のウェブメディアの構造的な問題だと思うんですが、そこをどうしていくべきかは、諦めずに業界全体で議論をし続けたいです。