豊田章男・トヨタ会長に大逆風!取締役再任賛成率が「候補中まさかの最低」…目前まで迫ってきた「株主がトップをクビにする」株主総会
機関投資家も反対しづらい
取締役候補が株主提案で出されるところまでは至らなくても、会社側提案に機関投資家が反対するケースも目立った。 自動車の量産に必要な認証「型式指定」の検査不正問題に揺れるトヨタ自動車の株主総会でも、経営トップに厳しい反応が出た。会社側が提出した取締役選任議案で、豊田章男会長の取締役再任議案への賛成率が71.93%と取締役候補の中で最低にとどまったのだ。また、副会長の早川茂氏も89.83%で、他の候補者8人がいずれも95%を超えている中で、明らかに賛成票が少なかった。 豊田氏の再任議案については、議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)と米グラス・ルイスの2社が、トヨタグループで相次ぐ不正の最終的な責任があるなどとして反対推奨していた。議決権助言会社は海外の年金基金など機関投資家に大きな影響力を持っており、実際、米国の複数の公的年金基金は反対票を投じたと表明していた。 議決権行使会社は業績悪化など一定の基準を設け、それに抵触すると、反対推奨する。例えば、過去5期の平均ROE(株主資本利益率)が5%を下回り、かつ直近年度のROEが5%未満の場合は原則、経営トップ(社長や会長など)の取締役再任に反対推奨することになっている。海外の機関投資家の場合、日本企業の個別の財務諸表や経営体制を調査する体制を持っているところはわずかで、議決権行使会社の推奨に自動的に従うケースが多い。 また、日本の年金基金や生命保険会社などの機関投資家も、赤字が続いている場合など経営トップに反対票を投じるような投票行動基準を設けるところが増えている。また、議決権行使会社の意見も参考にする傾向が近年強まっている。 特に世間を騒がせる不祥事が起きた場合などは、トップに賛成票を投じにくくなっているのが現状だ。かつては会社側提案には無条件で賛成票を投じることが多く、「モノ言わぬ株主」と揶揄されてきたが、2014年に機関投資家のあるべき姿を示したスチュワードシップコードが定められて以降、行動が大きく変わってきた。 アクティビストの「正論」にこうした機関投資家が反対できなくなりつつあり、今後は、業績不振を続けたり、不祥事を起こした企業のトップが株主総会で解任されるようなケースも増えてくると見られる。 ・・・・・ 【さらに読む】『国民をバカにしている! 自民党が政治資金規正法改正で「外部監査強化」ではなく「第三者機関」にした許しがたい理由』
磯山 友幸(経済ジャーナリスト)